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It's
【ラブコメ 官能小説】

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☆☆☆-1

太陽が本気を出してきた。
翌日、陽向は海沿いの実習先まで電車に揺られていた。
多分、今までの実習先の中で一番遠いんじゃないかと思う。
今朝は少し寝坊してしまい、慌てて準備した。
トイレに行っていなかったため、今、ものすごくトイレに行きたい…。
駅の改札で待ち合わせようと昨日優菜にはメールをしておいた。
改札を出ると、優菜は既に来ていた。
「おはよう」
やんわりと挨拶される。
「おはよ。暑いねー…」
「ねっ。あ、ひなちゃん体調大丈夫?」
「うん、全然へーき。休んだら元気になったよ!」
「五十嵐くんに看病してもらったの?」
優菜は顔をニヤつかせてそう言った。
その言葉に過剰に反応してしまう。
優菜が昔湊の事を好きだったと知ってしまってから、その話題になる度にどうしたら良いのか分からなくなってしまう。
「あ…あぁ…家には来てくれたかな?…はは」
上手くかわせる語彙力を身につけたい。
優菜と炎天下の中、地図を見ながら目的地まで向かう。
駅から徒歩10分と書かれていたので、バス代もったいないし…と若さを発揮して歩くことにした。
が、そんな無駄なことを発揮したのが間違いだった。
歩いても歩いても辿り着かない。
「あれっ?ここ曲がったでしょ?ここ……あれっ?」
2人で地図と睨めっこする。
「間違えたかな?」
「間違ってないと思うけど…」
悪戦苦闘しながらようやく目的地に着いた時には、集合時間5分前だった。
汗ダラダラで迎えられる。
「ごめんなさいね、分かり辛かったでしょ?」
小太りの眼鏡の女の人に「入って入って」と中へ促される。
見た目は普通の一軒家で、横に小さな看板があるだけだったので見逃してしまっていたのだ。
中に入ると、クーラーの涼しさで生き返った。
事務所のような所に通され、優菜は椅子に座り、陽向は椅子にバッグを置いた後、トイレの場所を聞いて駆け込んだ。
あー…不安だなー…。
水道で手を洗いながら陽向は鏡の中の自分を見つめた。
初日だというのに、今にも死にそうな顔をしている。
でもあと2週間で終わりだ!
自分を奮い立たせ、事務所に戻ると優菜に「ひなちゃんプリントある?」と言われた。
実習先の指導者に出すものだ。
「ちょっと待って…」
バックを漁り、プリントを探す。
が、ない。
「あ…あれ?」
「どーしたの?」
「プリントない…。家に置いてきちゃったのかな…」
どのファイルを探しても見当たらない。
絶対、昨日入れたはずなのに……おかしいな…。
陽向は家に置いてきてしまったかもしれない事を指導者に伝え、椅子に腰を下ろした。
最悪だ。
「家にあるといいね」
「うん…」
指導者も大丈夫と言ってくれたので陽向は安心しその日の実習に臨んだ。
在宅実習はほとんど個人行動だった。
その日に向かう家の利用者さんの情報を取り、1人の看護師について色んな家を回るのだ。
「じゃあ行きましょうか」
今日の担当の看護師の村田さんと一緒に車に乗り込む。
村田さんは結構若めの綺麗なお姉さんだ。
「風間です。よろしくお願いします」
「よろしくね。今から行くとこの人はね…」
村田さんが利用者さんの話を始める。
陽向は真剣にその話を聞き、必死にメモをとった。
「あはは!そんなのメモしなくていーって!風間さん真面目だね〜」
「あはは…すいません…」
「でも、真面目な学生さんが来てくれて嬉しいよ」
村田さんと行動を共にした1日は楽しかった。
話上手で、雰囲気も話し掛けやすくて質問もしやすい。
こんな人になりたいなぁ…と思いながら初日は終わった。
帰り道、優菜と並んで歩く。
「在宅って結構楽しいね」
陽向が楽しそうに今日の話をしている横で優菜はぐったりしている。
さっきから愛想笑いを浮かべてばかりだ。
「どーしたの?」
優菜曰く、今日ついて回った看護師が最悪だったらしい。
心が折れそうだ、と。
「なんか冷たいし、業務的ってゆーか、学生嫌いオーラすごくてさ…」
「みんながみんな優しいわけないよね…あたしもその人に当たったらやだな。あはは」
そっか。
そーゆー人もいるよね。
今までの実習でもそうだったし。
学生嫌いの看護師なんていっぱいいるよ。
でもそれはそれで仕方ない、自分はこんな風にならない、と心の中で割り切るしかないんだ。
「ま…でも明日も頑張ろうよ」
「そーだね」
帰りの電車では優菜は一言も喋らなかった。
明日の事を考えているのだろうか。
「じゃ、また明日ね」
乗り換えのため、陽向は優菜に別れを告げて電車を降りた。
乗り換えた電車の車内で、最近変えたばかりのiPhoneをいじる。
今話題のSNSの画面を開くと、同じ学校の人たちが実習の事について日記やらつぶやきやらを投稿していた。
陽向はつい最近始めたばかりで使い方がよく分からないので、簡単なプロフィール設定だけして他は何もせずほとんど見る専門だ。
たまに、友達にコメントしたり。
みんな大変なんだなーと他人事のように思いながらつぶやきを見る。
『これが終われば夏休み!』
と、楓がつぶやいている。
陽向は『終わったらいっぱい遊ぼー』と、コメントして画面を閉じた。

陽向は家に着くなり、無くしたプリントを探し回った。
やはりどこにもない。
一体どこに行ってしまったのだろうか。
もう、謝るしかない。
あー…怒られる。
めんどくさい…。


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