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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第11話-68

「………」
「………」
 しかし、航は、胸に抱える形になった結花を、なかなか解放しようとしなかった。
「あ、あの、木戸……?」
「片瀬」
「えっ……」
 ぎゅ、と身体に圧迫感が生まれた。航が、自分を抱えている右腕に力を込めて、抱きしめてきたからだ。
(えっ、えっ、ええっ!?)
 明らかに、いつもと違う行動である。おでこを触られたときに、照れ隠しのため“セクハラだ”といってしまったことがある結花だから、それを航が気にしているとしたら、絶対にしてこないはずの“抱擁”という行為だ。
「え、ちょ、き、木戸……??」
 脳内が一気に沸騰し、考えが整理できない。
 結花は、航の胸に抱き締められるままに、真っ白になった時を過ごす。
「……だ」
「?」
「俺、お前のこと、好きだ」
「!!??」
 唐突である。まさに、唐突である。
「き、ど……いま、なん、て……?」
 航の顔を見上げる、結花。耳に入ってきた言葉が、あまりにも唐突だったので、聞き逃してはいないが、訊き直していた。
 自分のことを見つめる航の顔は、今まで見たことのないぐらいに、真っ赤に茹で上がっていた。
「片瀬のことが、好きなんだ」
「!」
 もう一度。もう一度、航の告白を聴いた。今度は、目を見つめられて。揺らぎのない真摯な眼差しを受けながら、結花は、航の口から聞き間違いようのない“告白”を聴いた。
「木戸……ほんと……?」
 それでも、それが信じられなくて、結花は訊き返した。
「ほんと、だ。好きだ、片瀬」
「木戸ぉ……」
 沸騰した脳が、ようやく機能を取り戻した。三度も“好きだ”と言われれば、何を疑うことなどあろうか。
「あ、あれ……あれ……?」
 涙が、零れた。ぽろぽろ、と、零れ落ちた。
「お、おっかしいな……なんで、わたし……」
 嬉しいはずなのに、泣いているのだろう。航が“好きだ”と、はっきり言ってくれたのに、どうして、涙が出てくるのだろう。
「も、もぉっ……」
 親にだって、最近はほとんど見せたことのない涙だ。中学3年生のとき、所属していた陸上部の全国大会で、コンマ一秒の差で優勝を逃したときがその最後だと、記憶している。
「アンタに、泣いてるトコ、見られるの、こ、これで、二回目よっ!」
 それなのに、航にはもう、今年に入って二度も泣き顔を晒してしまった。
「責任、とってよ」
「?」
 結花は、涙を浮かべたままの瞳を閉じると、頤を浮かせて、唇を差し出した。
「………」
 その仕草が求めた行為に、気がつかないとしたら、国際級の朴念仁だ。国家犯罪クラスだといってもいい。
「片瀬……」
 幸いにして、航は、指名手配を受けるほどの朴念仁ではなかった。
 航の顔が近づいてくる。迫ってくる息づかいで、結花にはそれがわかった。
「ん……」
 受け止めた唇に、柔らかい感触が生まれた。両親にだってされたことのない、生まれて初めての、唇同士のキスだった。


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