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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第11話-16


 法泉印大学との試合にあたって、双葉大学にはひとつの“制約”があった。
 だいぶ以前に触れたことなので、その繰り返しになるのは恐縮だが、法泉印大学は、“隼リーグ”に所属する大学の中で、もっとも遠い区域に位置しており、市営の球場まで、高速バスを使って乗り継ぎ、2時間ほどの行き来が必要になる。そこで、法泉印大学仕様の“特別ルール”が設定されていた。
 “前年度において、総合成績が法泉印大学よりも下回ったチームは、法泉印大学の地元にて試合を行う”という、それがルールの内容だ。
 ところが、近年、実力をつけてきた法泉印大学は、昨季の優勝を始めとして、上位に名を連ねることが多くなってきた。そのため、法泉印大学の追認を得る形で、このルールに改正条項が加わることになった。
 それは、“前年度成績が、法泉印大学を下回っており、かつ、4位以下のチームがそれに該当する”というものである。
 双葉大学は、入れ替え戦で1部リーグに初参戦した今季、実質の順位参考は享和大学の最下位ということになるので、法泉印大学との対戦は、当校の地元球場で行われることになっている。
 高速バスで2時間の往復…。日帰りの強行日程も不可能ではないが、試合への影響は大きなものになる。そこで、地元に特殊な“宿泊施設”を持つ法泉印大学は、その施設を無料提供することも、ルール改正の際に申し出ていた。
 先にも少し触れたように、法泉印大学は、僧侶育成機関が母体の大学である。従って、生徒・職員には寺院関係者の人間が多く存在しており、地元に点在する寺の住職を務めるものも多い。
 特に、数年ほど前から法泉印大学の監督を務めている“梧城寺 楓”は、大学のある法泉市の中で、それなりの敷地を持つ浄土真宗系寺院“安広寺”の御院(住職)でもあり、その境内にある宿泊施設を、“隼リーグ”関係者に提供していた。
 もちろん、無償提供なので、必要最低限の寝る場所が確保できている、という点に終始する。また、人数の制約もあるので、場合によっては他の寺院と、分かれての宿泊にもなる。それを了解した上での、宿泊施設の使用ということになる。
 今回、双葉大学は、法泉印大学に宿泊施設の提供を願い出ていた。監督のエレナは、選手時代に一度、法泉印大学の地元で試合をしたことがあり、温泉施設も周囲に多いその土地柄を気にっているところもあって、今回は2泊3日の“遠征試合”と位置づけて、日程を調整したのである。
『なんでも、試合のある週末は“法泉まつり”に重なるらしいので、試合のあとのnight timeは、ノビノビできますよ』
 そういうことらしい。
 もちろん、移動費のみで、ある意味“小旅行”ができるとあって、双葉大学のメンバーたちは、自ずとその士気を上げていた。

「と、いうわけで、僕たちはバスに乗っているのです」
「……誰に言ってるんだよ、吉川?」
 隣に座る浦が、突然に独り言を喋り出した吉川のことを、憐憫の眼差しで見ていた。
「神です」
「……何を言ってるんだよ?」
 さて、である。
 窓から見える景色の流れは、とても速い。北へ向かう高速道路は車の数もさほど多くはなく、非常にスムーズな道行であった。
「試合が終わった後は、寺廻りってのも悪くないな」
「ちょっと、雄太。私たちは、試合に行くんだから。旅行気分じゃ困るわよ」
 当然ながら、品子と雄太は席を隣り合わせている。歴史に造詣の深い雄太は、法泉市が仏教的な歴史のある土地柄であることを知っており、関連の寺院施設に関心を抱いていた。そんな婚約者の軽い気分を、品子が窘めている。
「法泉市って、真宗にゆかりの深い場所なの?」
「ああ。真宗はどちらかといえば、西日本や北陸で広まっているイメージはあるけれど、蓮如上人の布教活動は全国規模で行われていたから、当然、ゆかりのある場所も多いよ。特に法泉市は、戦国時代の一向一揆で拠点にもなっていたらしくて、しかも、どちらかといえば東日本は、天台宗とか真言宗とか、禅宗の頒布が主だったから、宗教の上でもかなり激しいやり取りがあったらしいね。ところで、法泉市内で一番大きな寺院が“浄隠寺”というのだけれど、これは……」
 歴史の話になると、意外に饒舌になる大和を、桜子が興味深々といった様子で見つめていた。ちなみにお話については、残念なるかな右から左に受け流していたが…。


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