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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第11話-14

「お尻、大丈夫?」
 大和は、存分に叩いたことで真っ赤になった桜子の臀部に、その手を優しく這わせて、撫で回した。
「ひあっ、く、くすぐったいよっ……」
 ナデナデ、と、明らかな性的色の強い労りに、桜子は身を捩らせる。それでも、大和のそんな行為を、少しも厭だと思っていないことは、頬の緩んでいるその表情で、明らかになっていた。
 叩かれたお尻は、確かにじんじんとした痺れを発しているが、それを大和の手で撫でられると、心地よさがいや増しに増して、桜子を軽く悶えさせてもいた。
「もぉ……また、したくなっちゃうじゃない……」
「それなら、それで、僕も嬉しいけど…」
「エッチだぁ」
 そのようにして、体を優しく抱きしめあいながら、“後戯”を愉しむ二人であった。
 ちゅ、と軽いキスを最後に交わして、睦みあいに一段落をつけると、少しばかり真面目な表情を大和は浮かべた。おそらく、次の試合に向けて、その意識を集中させ始めたのだろう。“最強の左腕”そして“長尺バットの最小選手”、また、“南米出身の最長選手”がいる、法泉印大学との一戦に…。
「やっぱり、もっと“緩急”を使わないといけないな」
「そうだね…」
 今日のセックスのことではない。“スパイラル・ストライク”だけでは、おそらく、次の試合も含めて、後期に向けた戦いの中で苦戦を強いられることになると、二人は確かな予想をしていたのだ。
「あの“カット”、もう少し精度をあげられれば…」
「………」
 春先に行われた、ドリーマーズとの練習試合の後、松永に教わったと言うカットの握り。それを、大和は身に着けようと、苦闘している最中であった。
「はじめからボール球じゃあ…」
 十球投じて、ストライクコースから変化をするボールが、二球。ほとんどが、ベースのはるか手前でワンバウンドしてしまうという精度では、とても実戦では使用できない。
 おそらく、腕の振りが鋭いために、“ブレーキがかかる”という松永のカットボールの握りで投じられたそれが、松永の投げるものよりも激しい空気抵抗を受けることで、急激に失速し、ワンバウンドのボールになってしまうのだろう。かといって、腕の振りを緩やかにすれば、球種は相手に簡単に判ってしまう。それでは、カットボールとしては、まったく意味を成さない。
 親指の位置を、通常のものにして試してみたこともある。しかし、ボールの変化はそれほど生まれず、結局は投げ損ねのストレートと変わらないものになったため、大和としては満足のいくボールとはならなかった。
 ブレーキがかかる。変化球として、抑えておきたいこの要素を、カットボールの投法で生み出すことに、意味と意義があるからだ。ストレートと同じモーションで、全く別の軌道を描く球種を投じられれば、それを打ち放つことは容易ではない。スライダー、フォークボール、チェンジアップが、“決め球”として主に重宝される理由でもある。
 大和は並行して、チェンジアップの握りでも試してみた。しかし、リリースの度合いが違うものか、それは“棒球”というべき直球にしかならず、とても変化球とは呼べないシロモノになっていた。
「仁仙大学との試合の時に、一度だけ、完璧に決まったあのカットボール……」
 桜子と大和は、それを理想の形として、追い求めていたのだ。スライドしたかと思った瞬間、ストンと落ちたカットボール。桜子がミットで追いきれなかったほどの、急激な変化をしてみせた、あのボールを…。
 大和は、“指先が上手くかからずに、抜けたようになってリリースされたボールだ”と言っていたが、そこにヒントがあると桜子は思っていた。そして、松永に教わったと言う握り方から投じられたカットボールの軌跡が、それにもっとも似通っていた。無意識のうちに、その握りで投じられたストレートが、あの変化を引き起こしたのだろう。
 だから今は、松永直伝というべき“カットボール”の完成に、全力を挙げているところでもあった。


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