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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第10話-9

「去年の優勝は……法泉印大学か」
 桜子と大和、そして、結花と航が、双葉大学軟式野球部の部室にいた。今日は活動日ではないが、この四人はほとんど毎日、練習のために部室に通っている。
 先日発行された、“隼リーグ”の特集パンフレットを手にして、四人はこれから自分たちの戦いの舞台となる1部リーグの展望について、思惟を膨らませているところだった。
 2部リーグは当然ながら、自分たち双葉大学が優勝を収めた。そして、入れ替え戦でも見事に勝利して、念願の1部リーグ昇格を果たした。
 “隼リーグ”始まって以来の快挙を達成したこともあり、双葉大学についての記事は、いつの間にここまで資料を集めたものか、かなり大きく紙面を割かれていた。
 その記事については別にして、いま四人は、昨年の1部リーグの成績を見ている。
 それは、以下のようになっていた。

  総合優勝 法泉印大学(初優勝)
  総合2位 仁仙大学
  総合3位 城南第二大学
  総合4位 櫻陽大学
  総合5位 星海大学
  総合6位 享和大学(入れ替え戦にて敗退。2部リーグ降格)

「法泉印大学が、仁仙大学をプレーオフで破り、念願の総合初優勝を飾る…か」
「仁仙大学は、前期では優勝していたから、去年は大逆転だったみたいね。仁仙大学も、プレーオフに勝っていれば総合では初優勝だったらしいけれど…」
「これで、発足当初から“隼リーグ”に参加している中で、仁仙大学は、唯一総合優勝のないチームになった…か」
 昨年は、1部リーグの戦いは言うなれば雲上のものであった。入れ替え瀬で、6位となった享和大学と対戦をしたが、あれだけ手応えを感じさせたチームでも最下位になってしまうところを考えると、1部リーグは相当の難戦が予想される。
 今季の1部リーグの展望と、チームの簡単なプロフィールを紹介されている記事に目を通す。昨季の順位から並べて、それは主に下記のようになっていた。

 法泉印大学(優勝回数:1回)
 投手力:S、打撃力:A、守備力:B、走力:A
 注目選手…天狼院 隼人(投手・3年)

 仁仙大学(優勝回数:0回)
 投手力:A、打撃力:A、守備力:A、走力:A
 注目選手…六文銭 孝彦(三塁手・4年)

 城南第二大学(優勝回数:3回)
 投手力:B、打撃力:C、守備力:A、走力:S
 注目選手…速水 俊介(中堅手・4年)

 櫻陽大学(優勝回数:12回)
 投手力:C、打撃力:A、守備力:B、走力:B
 注目選手…御門 一太郎(右翼手・2年)

 星海大学(優勝回数:1回)
 投手力:B、打撃力:C、守備力:S、走力:B
 注目選手…田村 久(遊撃手・2年)

 双葉大学(今季初昇格)
 投手力:C、打撃力:B、守備力:C、走力:C
 注目選手…草薙 大和(三塁手・2年)


 双葉大学は、入れ替え戦と、2部リーグの決勝を除いては、圧倒的な強さで勝利を重ねてきた。しかし、それでもなお、1部リーグ関係者の目線で見れば、評価は相当に辛いものとなっていた。
「初の昇格となった双葉大学の奮闘に、期待したい…か」
「センパイのところ、“三塁手”になってますね」
 結花の言うように、大和は“野手”として注目されているようであった。もっとも昨季は、先発が1回と、リリーフが数回あるだけだったから、そのように認識されているのも当然と言えるだろう。
「日程的に言えば、初戦は城南第二大学みたいですね」
 航が言う、双葉大学の1部リーグ・デビュー戦は、
「エレナさんの出身大学だよね」
 と、桜子が続けたように、縁深いチームが相手であった
 その城南第二大学は、チームの監督であるエレナが選手として所属していた時には、櫻陽大学と激戦を繰り広げながら、未踏の三連覇を達成している。そしてそれは、“隼リーグ”の中でも伝説として語り継がれていることでもあった。
「仁仙大学とは、第2戦になるのか…」
 大和が呟く。記事の中では何も触れられていないが、その仁仙大学に所属しているはずの、“安原誠治”という存在がいま、大和の中では関心の高いものになっている。
(どんな選手なんだろう)
 過去の記事によるならば、“隼リーグ”に初めてその姿を表した1年生の時に、リーグ初の“三冠王”(打率、本塁打、打点で、トップの成績となる)を獲得したそうだ。これは、リーグ出身者で現在唯一のプロ野球選手である、管弦楽幸次郎でさえも成し遂げられなかった大記録だ。
 入学初年度から大記録を達成した安原誠治は、“隼リーグの至宝”と呼ばれるようになり、管弦楽幸次郎を凌ぐ活躍を期待されていた。しかし、不整脈を発症したことで2年目以降は選手登録を外れ、昨季も出場の機会がついになかった。
 それが今年は、ようやく復帰できるらしいと、縁者というべき航から話を聞いていた。顔を合わせたこともある大和としては、対戦が待ち遠しいと感じる選手でもあった。


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