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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第9話-17


 先手は結花である。内野手仕様の小ぶりなグラブを手にして、二塁手の位置に立った。高校時代はそのポジションで、レギュラーを張っていたからだ。
「それじゃあ、片瀬。よろしくな」
 ノックバットを手にしているのは、岡崎である。チーム随一ともいえるバットコントロールを持っている彼は、当然、ノッカーとしても一番の腕前を持っていた。
「よろしくお願いします!」
 体育会系部活動出身者特有の、凛とした張りのある結花の声を受けて、岡崎が第一打をまずは放った。
「!」
 一・二塁間の絶妙な位置にそれが転がる。結花は、機敏に脚を動かして、すぐさま打球を正面に捕らえ、しっかりとグラブで捕球してから素早い動作で送球モーションに移り、一塁手の雄太がファーストミットを全く移動させない、よくコントロールされたスローイングをしてみせた。
「ほう、やるな」
 基本に忠実な動きだが、可憐な存在感があった。
「どんどんいくぞ!」
 右に左にと、矢継ぎ早に岡崎が打球を放つ。結花はそのいずれもを、後ろに反らすことはなく、また、雄太への送球も左右に反れるということがなかった。
「こいつはどうだ!」
 二遊間に、強い打球が飛んだ。それは、捕球をあらかじめ計算してのことではなく、敢えてヒットゾーンめがけて打ち放たれたものだ。そんな打球にどのような反応をするか、試すためのものだった。

 バシッ!

「おおっ!」
 結花は俊敏な動きで打球に追いつくと、身体を大きく伸ばしてそれを掴んでみせた。
 それだけでなく、打球を掴んだ慣性を利用しながら身体を反転させて、華麗な動きからのランニングスローで、一塁手の雄太に、ワンバウンドながらしっかり届く送球をした。
 まるで蝶の舞を見ているような、華麗な守備であった。
(美作先生に、みっちり仕込まれているな)
 大和は、ノッカーとしては疑問符がつくが、グラブを持たせたら超一流の名手といってよかった高校時代の恩師・美作の動きをダブらせていた。
「よし、ここまで! …なかなかいい動きだった」
「ありがとうございました!」
 ちょうど五十球に達したところで、結花へのノックは終了した。彼女はただのひとつも打球を後ろに反らさず、雄太の足がベースから離れてしまうような送球もなかった。
(岡崎センパイのノック、とても上手だった)
 これは結花の感想である。正面で淡々と捌くようなゴロはひとつもなく、かといって、明らかに追いきれない守備範囲を外れた打球もなかったのだ。打ち放たれた打球の全てが、全力で処理しなければ対応できない、高校時代の恩師・美作とは比べ物にならない、まさにノックのお手本というべき内容だった。
「次は木戸だな」
「はい、お願いします!」
「外野仕様でいくから、そのつもりでな。バウンドの打球は、中継なしで蓬莱にバックホームをするように」
「わかりました!」
 いうや、航は全力疾走で、足取り早くセンターの位置についた。物静かな雰囲気ではあるが、動きに覇気があって、岡崎としては非常に好感が持てる。
「いくぞ!」
 知らず、口元に笑みを浮かべながら、ノックバットを振り出す岡崎であった。
 航への打球は、フライとライナーが中心となった。もちろん、簡単に正面で捕れるような打球はひとつもなく、強さも一定ではない。守備範囲ぎりぎりのところを狙う打球も健在で、前後左右に航は動き、ノックを受け続けた。
 打球の正面に身体を入れて、正対した状態で捕球をする。基本に忠実に打球を捌く一方で、守備範囲のぎりぎりを襲う打球に対しては、その落下地点をすぐさま予測して、いったん目を切ってから捕球位置を目指し、改めてその打球と正対する。
 結花のような華麗さはないが、実に見事な外野手としての動きであった。
「木戸、バックホーム、いくぞ!」
「はい!」
 最後の十球は、いわゆるセンター返しの打球が放たれた。ヒット性の当たりが飛ぶや、そのバウンドにしっかりとリズムを合わせて捕球をし、走り出した慣性そのままに勢いをつけて、捕手・桜子への返球を敢行する。

 ビシッ!

 と、地を這うようなノーバウンドでの送球が、桜子の構えるミットに突き刺さった。
「ナイスバックホーム!」
 大和が言う、“地肩”の強さを感じる一投であった。
 それが十球とも、何の乱れもなく行われ、しかも、程よくコントロールされており、外野手として申し分のないセンスを感じさせる。
(センターは、決まりだな)
 守備範囲の広さ、打球判断のよさ、肩の強さ、送球の正確さ。その全てを高レベルで備えていることが、中堅手には求められるのだが、航はその条件にものの見事に当てはまっている。岡崎は、迷いなく航にセンターを任せることをノックの中で決めていた。


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