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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』第9話-18


 バッティングについても、二人は非凡なところを見せた。
 フリーバッティングの開始と同時に、まず最初に打席に入った結花は、マウンドに立つ大和と対峙することになって、何か感慨深いものを心に抱いた。
「よろしくお願いします!」
 しかし、感傷めいたそんな心はすぐさま何処かへ追いやり、結花はひとりの打者として、投手・大和を視界に捉えた。彼にいつか教えられた、バットを短く持つコンパクトな構えを取り、打席内の最もベース寄りに立った。
 バットを短く持つのは、自分の非力さを、バットスイングを鋭くすることで補うためであり、ベース寄りに立ったのは、アウトコースにもその短く持ったバットで対応できるようにするためだ。内角を厳しく攻められることへの恐怖心があっては、その構えは実践できない。

 キンッ。

「おおっ」
 外角球に対してしっかり踏み込んで、右翼への流し打ちをしてみせた結花のバッティングは、一二塁間を鮮やかに抜けていった。
「ナイスバッティング!」
 本当に、そう言いたくなる打球であった。
 その後も、内角・外角と投げられたボールに対して、結花はそのいずれもを左右にしっかりと打ち分け、典型的な広角打者であることを知らしめた。
 所定の十球を終えて、打席を次に控える航に譲る。
 航は、大和に対して一礼をして、その静かな雰囲気を崩すことなく、打席の中で構えを取った。
(いい構えをしている)
 大和にとって、マウンドに立った状態で航を打席に迎えたのは、2回目のことである。ただし、その1回目に当たる例の練習試合では、亮に本塁打を打たれた直後のことでもあったため、曖昧な記憶しか残っていなかった。
 だが、よく見てみると、頭頂部から爪先まで、一本の軸がしっかりと固定されており、よく引き絞られた腰周りと腕のバネが、好打者としての風格を漂わせていた。
(結花ちゃんとは、好対照だな)
 初球をセンター前に運ばれた大和は、つくづく、二人がとても良いコンビだと思った。
 航の打者としての特徴は、自分の“間”を持っていることである。打席内での動きは余りなく、投じられたボールに対して、自分のスイングをしっかりとこなしてそれを打ち放つ。結花のような器用さこそ感じないが、どのコースに対しても身体の軸がブレないスイングをしてくるので、朴訥とした雰囲気からは想像もできない、底の知れない威圧感を与えてくる打者であった。
「二人ともいい選手だぜ。こいつは、次の試合が楽しみになってきたな」
 これは、雄太の感想である。ちなみに、1部リーグの開幕に先駆けて、エレナの主導によって週末に練習試合が組まれている。エレナ曰く、相手はやはりシークレットだそうだ。
「それでは、今日の練習はこれでオシマイです。ユカも、ワタルも、初めての参加で疲れたでしょうから、しっかり休んで、明日にソナエルのですよ」
 ちなみに、二人の歓迎会兼1部リーグ開幕決起集会は、蓬莱亭が定休日である明後日に予定されていた。


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