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ガラス細工の青い春
【純愛 恋愛小説】

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-1

 テストが終わり、夏休みに入る前の束の間の授業は、テスト返しに終始する。英語の授業、自分の点数よりも自分のメモを見てテストに臨んだ二人の点数が気になった。
 教師に手渡された答案を手に持った優斗が、教卓からふらりと清香の席まで歩いてきた。
「清香、俺英語で三十点以上とったの生まれて初めて」
 そう言って見せた点数は五十点で、清香が知っている優斗は大抵百点満点の三割取れたら良い方だから、この点数はかなり良い方なのだ。
「やったじゃん、凄い凄い」
 立っている優斗の顔を笑顔で見上げると、目を細めた優斗が「清香のお陰じゃん」と清香の頭を数回撫でた。そう言ってもらえる事は嬉しい事なのだけど、圭司がこの様子を見ていたらどう思うのだろうかと不安に感じ、わざとらしくならない程度にすっと視線を圭司に投げた。圭司は、自分の答案が返されるのをじっと待っているようで、腕組みをして教卓の方をじっと見ている。
 圭司は答案を返されても清香の席へはこなかった。そのまま自席に座って答案をじっと見ている。何点だったかなんて聞きに行くのもおかしな事だと思い、清香は自分の答案に目を落とした。

 放課後、部活に行く前に圭司の席に歩み寄る。「圭司」
「何?」
「英語、どうだった?」
 圭司は口の端から笑みを零しながら、鞄から二つに畳んだ白い紙を取り出し「俺史上最高点」と言って七十五点の答案を開いてみせた。
「あぁ、良かった。何も言って来ないから点数悪かったのかと思った」
 紙を元通りに折りながらぽつりと言う。「ユウがいたから」
「何?」
「ユウが清香の頭撫でてたから、何となく俺は入れる空気じゃなかった」
 自分が招いた事態ではないにしても、何となく何か言わなければと思い「ごめん」と零す。
「別に清香が悪い訳じゃないし、ユウだって悪気はないだろうし。あいつバカだから」
 ヘラリと笑ってみせるも、やはりどこか引き攣っているように見える圭司の笑顔に向かってもう一度「ごめんね」と清香は目を伏せた。
 教室内の騒がしさが妙に引き立って耳に入る。二人の間にある沈黙を悪い意味で引き立てている。
 清香は言葉を探すが、先に口を拾いたいのは圭司だった。
「今日さ、帰り、待っててもいい? 一緒に帰ろうよ」
 清香は時計を見ると、白と黒のシンプルな壁掛け時計は三時半をさしている。これから部活動に出なければならない。
「六時半ぐらいまでかかるよ?」
「いいよ、ユウの家で時間つぶして、また学校に戻ってくるから」
 ユウの家は学校のすぐ傍にある。時間潰しにはもってこいのスポットで、日頃からたまり場になっている事は知っていた。そこで過ごす三時間が、果たしてあっという間なのか、それとも長い時間なのか、清香には分かりかねた。
「うん。もし待ってるの面倒になったら帰っちゃっていいから。そしたらメールちょうだい」
 手に持っていた携帯をちらりと見せると「いや、絶対待ってるから大丈夫」と言って白い歯を見せて笑った。



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