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生徒はお嬢様
【コメディ 官能小説】

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生徒はお嬢様!?-10

 唇に指を当てて、キスの温もりを感じている撫子。そんなにもキスが嬉しかったのか?
「とても身体と心がポワポワしますわ」
 そ、そうか……俺は、気恥ずかしかったけどな。女に……しかも年頃の女の子にキスを
するだなんて普通に、出来るものじゃねぇよ。
「あぁ、彼方さん……」
 ふらふらとこちらに近づいてくる撫子。一体、何をするつもりなんだ?
「もう一度……もう一度、わたくしにキスを……」
「甘えるな。褒美はもう与えただろ」
 撫子の頭をズビシと叩く。これ以上、調子に乗っては困るからな。それに俺だって何回
もキスをして正気でいられるとは思わないしな。
「い、痛いですわ。あまり頭をポンポン叩かないでくださいまし」
「叩かれることを言うのが悪いんだろ」
 あまり我儘を言うもんじゃないからな。
「ほんとに彼方さんはケチですわね」
「ケチで結構だ。もう帰るからな」
「あ、あぁ……っ」
 後ろで撫子が声をかけてきていたような気がしたが、それを無視して部屋から出て行く。
 まったく少しはこっちの身にもなって欲しいものだ。キスなんかさせられて、顔が赤く
なってしまっている。年下にこんなにも翻弄されるとは、俺もまだまだ甘いな。
 赤く、熱くなった顔を冷やすために走って自分の家に帰る。
 クソッ! こんなんで家庭教師として上手くやっていけるのか? ほんと、先が思いやられるよ。


 藤原彼方の通う大学のとある研究室。そこに佇んでいる一人の女性。彼女は携帯を取り
出し、ある人間に電話をかけていた。
『……もしもーし、九条ちゃんですかー?』
『ああ、私だよ。君は相変わらずだね。まるで同年代の友達のように私に接してくる』
『あらあら、もしかして嫌だったかしら?』
『いや、そんなことはない。私は君のそんな態度は嫌いじゃないさ』
『あははー、それであの子はどうだったかしら?』
『彼か。彼は君の言う通り、なかなかに面白そうな男だったよ』
『でしょー?』
『それに、娘の撫子も彼のことを気に入っているようだしな。色々とアプローチを仕掛け
ているんじゃないかな』
『それはそれは――九条ちゃんに似て、激しいアプローチなんでしょうね』
『それは耳が痛いな』
『まぁ、過去に苦労させられましたから♪』
『違いない』
『ではでは、また何かあったら連絡してねー♪』
『ああ。ではまたな……愛しの親友よ』
『はーい♪』
 ピッ、と電話を切り一つ空気を吐き出す。
「ふぅ……あの子はきちんとやれてるみたいね。よかった、よかった」
 電話の相手からも悪くない評価を得て、どこか嬉しそうな笑みを浮かべる彼女。
「九条ちゃんもだいぶ気に入ってくれたみたいだし、これから先――面白くなりそうね♪
 さぁ、彼方ちゃんは一体、私にどんな面白い光景を見せてくれるのかしら?」
 これから先、起こるであろう出来事に思いを馳せ、彼女は研究室を後にする。
 口元を僅かに歪め、悪戯を楽しむかのような悪い表情を浮かべながら――――
 


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