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THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-7



瑞稀はトランペットケースから折り畳んでいたメモを取り出し、広げて恵梨に見せた。
そのメモには、家族と恵梨の住所や電話番号、メアドが書かれていた。
あの人のは・・無い。

「これで、メールと電話するから、登録しておいて」
「・・・・分かった。」

もう彼氏のことを言わないと言った以上、聞く訳にはいかなかった。
“彼氏くんのは、ないの?”と。
ゆっくりと、瑞稀の手にある青いケータイを受け取り、握り締めた。
自分の手からケータイが無くなった瑞稀はメモを折りたたんで、ポケットにしまうと恵梨から一歩離れた。
それを感じた恵梨は俯いていた顔をバッとあげた。
視線のその先には、決意の籠った瞳をした親友。

「・・もう行かなくちゃ、かな」
「そっか・・。」
「・・ありがとう、恵梨。大好きだよ」
「・・・っ。それは、ウチのセリフだよ!瑞稀、親友だからね。“心友”だし、“神友”!ウチも、大好きだよ。」
「分かってるって!」

笑いながらガッツポーズをした二人は片手をあげて高くハイタッチをした。
そしてそのまま、瑞稀は恵梨の横を通り過ぎて搭乗口へ向かって歩きだした。
振り向いた恵梨は、「頑張りすぎないでねー!」と声をかけた。今の自分に出来る、精一杯のエール。
瑞稀は、顔だけ振り返って、「恵梨もね!」と片手をヒラヒラさせて搭乗口に入って行った。
手に青いケータイを握り締めながら、恵梨は瑞稀の乗る飛行機が出発したというアナウンスが入るまで、ずっとそこに居た。



飛行機に乗った瑞稀は、窓から見える雲の上の景色を見ながら、拓斗を想った。
窓に、頭をくっつけて、寄り掛かる。
別れることなんて絶対にしない、と、両思いになった時そう思っていた。
しかし・・あのメールを送った。

「・・・アイツの、為だもん。日本に居られない私より・・」

そう呟いた瑞稀は甘酸っぱいオレンジキャンディを口にいれて、静かに目を閉じた。
その目から、一筋の涙が流れた。




剣道の試合を終えた拓斗は、久々に届いた瑞稀からのメールに驚きつつも顔が緩んでいた。
ちょうど、優勝できた所で、一番に瑞稀に祝って欲しかった。
もしかしたら、もう知っていて、“おめでとー!”と言ってきてくれたのか。それか、最近会えなかったから、“会いたい”と言ってきてくれたのか。
どちらでも嬉しいことには変わりない拓斗は意気揚々とメールを開けた。
しかし、その文面には拓斗の望んだ言葉は無かった。

「・・・なんだよ、これ」

ドンっと控え室のロッカーに身体を投げてそのままズルズルと座り込んだ。
震える手の中にあるケータイに映し出された文面。
少し四拍があって、でもスクロールせずに読めるソレ。ただ、一言。

「・・“大好きだった”って・・何だよ瑞稀っ!!」

そう叫ぶと同時に、隣のロッカーを思い切り殴った・・。



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