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THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-2



「君は、トランペットをやっているそうだね。わが校の吹奏楽部にも入っている」
「あ、ハイ。やらせて頂いています」
「もうずいぶん長いのかい?」
「・・小4からですから・・・8年目・・、ですね?」

指を追って数えた瑞稀は、改めて自分がどれだけやっているのか実感した。
まだ10歳に満たなかった時に始めたものが、10代後半になってもまだまだ続いていることが少し嬉しかった。大好きなものなら、なおさら。
浮かれた瑞稀は、当初の目的を忘れかけた。
校長は、そんな瑞稀を見てゆっくり微笑むと、ある封筒を差し出した。

「これは、アメリカにいる旧友から届いたんだ。他の誰でもない、君宛でね」
「・・・私・・宛、ですか?」

ゆっくり手にとった瑞稀を見た校長は、机に置いてあったテレビ用のリモコンを持って立ち上がった。

「そうだ。まずは、ビデオから見てもらいたい。旧友からのメッセージだ。」
「は、ハイ。」

校長はDVDをデッキにセットすると、ソファに座り直してリモコンを操作した。
プロジェクターに写ったのは、一人の外国人男性だった。

『初めまして、瑞稀。いきなりで驚いたかい?ボクはジェフ。突然だが、君に話がある。・・・ここからは、日本語で話そう。』(『』内は全て英語)




親友を待っている恵梨は、自分の前を通り過ぎる生徒を見ながら何回か時計を見た。
時間は、授業開始の5分前を指していた。

「(そろそろ・・マズイんじゃないかな)」

何度見たか分からない位みた、校長室の扉をもう一度見たとき、瑞稀が出てきた。
少し大きい封筒を大事そうに抱えて、何か考え込んでいる表情をした親友が。
その様子を見た恵梨はなにかあったと確信した。
まあ、何も無ければ呼び出されもしないが。

「瑞稀、なんだった?」
「・・・・恵梨。どうしよう」
「・・?」

始めて聞く、親友の「どうしよう」という言葉で、そんなにすごいことがあったのかと思った恵梨は瑞稀との距離を縮めて顔を覗き込んだ。
封筒を抱えている白い手に、そっと自分の手を重ねた。
その温もりに安心した瑞稀は暫く黙っていたが、ゆっくりと声を発した。

「あの・・・さ・・。」
「うん。」
「・・誘われた・・。」
「え?な、何に?」

瑞稀の手に、力がこもる。
そして、俯いていた顔をあげて真っ直ぐ恵梨を見て言った。

「アメリカの・・オーケストラ楽団に。・・一緒にやらないか?って・・」
「・・・えぇ!?」

思いもよらなかった言葉が、恵梨の頭に繰り返しリピートされた。




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