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THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-3



なんだかんだ、異論があった者もいざ男子校のコンサートが決定事項になってしまうと開き直って練習していた。
皆楽器が吹ければそれで良いというくらい、楽器が好きなのだ。
かと言って、無茶苦茶やった部長にはあとで全員分のアイスを奢らせるという罰ゲームもちゃっかり。
・・・というのは、ちょっと関係無い話。

時間は流れて、文化祭2日前。
この日、絽楽学園女子の吹奏楽部は電車を乗り継いで男子校を訪れていた。
リハーサルとゲネプロを行うには、直接出向くしかなかった。
大きめな門をくぐると、文化祭準備中の生徒たちに注目された。中には、久しぶりに見る女子に目が血走ったり、鼻息が荒くなってる者まで居た。
幾分注目を集めているせいで居心地が悪い瑞稀は視線から少しでも逃れようと恵梨の斜め後ろに隠れた。

「・・瑞稀」
「・・ゴメン、でもヤダ」
「・・あのね・・」

恐らく、恵梨も嫌なんだろう。恵梨に隠れた自分を咎める声がいつもより低い。
謝ってもなお、隠れた自分を恵梨が更に文句を言おうとしたとき。

「・・あ、八神」

一人の男子生徒から小さく呼ばれた。
瑞稀がその男子へと視線を向けた。すぐには誰か分からず、首を傾げたがじっと見てみると記憶からある少年と重ね合わせることが出来た。

「・・・あ、阪本!!」
「瑞稀、知り合い?」

先程のイライラはどこへやら。男子を知っているらしい瑞稀に恵梨は普通の声で訪ねた。
その瑞稀はうん。と頷いてから説明した。

阪本愁(さかもと・しゅう)
瑞稀の元クラスメイト。そして、拓斗の唯一の親友。

「へえ・・」
「結構、話したんだよ」
「八神、何でここに来てんの?」

恵梨に説明している時にすぐ側まで来ていたのか、隣から声が聞こえた。
初対面の恵梨は驚くが、慣れっこの瑞稀はため息をついた。
小学校のころからいつもこんな調子で、人のことは気にしない。天然で、マイペース。
その言葉がぴったりだった。

「吹奏楽部のコンサートだよ。誘われてさ。・・知らないの?」
「初耳。」
「・・・相変わらずだな・・本当」

変わらない旧友の態度に呆れながらも、笑顔がこぼれる瑞稀。
愁は瑞稀と隣に居る恵梨や瑞稀には特に興味が無いようでボーッとしている。
すると、何かを思い出したような表情になって瑞稀に向き直った。

「八神。ちょっと良い?」
「ん?え、これからリハ」
「話したいことがあるんだけど」
「・・・恵梨。ゴメン、ちょっと抜ける」

リハーサルがあるからと断ろうとする瑞稀を、このまま無理やり連れて行きそうな愁の勢いに瑞稀はため息をついて、恵梨に断りを入れた。恵梨は流されるまま、うん。と頷いた。
愁は恵梨にチラッと視線を送ると瑞稀の腕を引っ張っていく。



為すがまま連れて行かれた瑞稀を見送った恵梨は、部長に「瑞稀ちゃんはどこに行ったの?」と聞かれ、「・・男子に連れて行かれました」と正直に答えて驚きと嫉妬の声をあげさせた。




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