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翼の記憶
【ファンタジー 恋愛小説】

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雷帝U-1

王宮の中へ通し、通路を歩きながら・・・葵は神官たちの紹介をした。ゼンは陽気な性格なのか、警戒心もなく始終にこやかな表情を浮かべていた。






「ゼン様はどちらからいらっしゃったのですか?」





丸い目を輝かせて葵がゼンに問うと、彼は少々困った顔になった。






「どこからっていうのは何て説明したらいいんだろうなぁ・・・雷の国、っていうのが俺のいた世界なんだが・・・」






『ふむ・・・異世界か・・・・』






「ん?なんだ今の声は」






突如聞こえた"世界の意志"の声にゼンはあたりを見回している。






『我は葵の中にいる・・・彼女は人界の王だ』






「・・・人界だと?」






ゼンは立ち止まって葵を凝視した。そしてその背にある純白の翼に手を伸ばした。





「・・・あっ」






普段触れられることのない翼をなでられ、おかしな声を出してしまった葵は口を塞いだ。





「初々しい反応だな?」






精悍なゼンの顔が近づき、葵は思わず身を引いた。と、横から葵を守るように九条の手が割り込む。





「・・・そういうことか」





口の端をあげてゼンは九条を見やった。





「今、"人界"と言ったな?
俺の世界で"人界"は空想上のものだと考えられている」





「見たことも、行ったこともない世界・・・ただ・・・」





「ただ?」





葵が首を傾げるとゼンは向きなおって言った。





「俺の世界には五人の王がいる。そのうちの一人が冥界の王だ。治める地は死の国ってところなんだがな」





「数百年前に異世界で王が誕生したと、当時の偉大な冥界の王が言っていたらしい」






『・・・異世界のこともわかるとなると相当な王だな』





「ただ誕生した王が人のかたちをしていた、ってことで"人界"と呼んでいた」





大和は数百年前という言葉を聞いて、すでに葵が王となってからそれくらいの年月が経過していることを悟った。





「いやぁ・・・その"人界"に来れるなんて思ってもみなかったな!!」





悪びれもなくゼンは豪快に笑った。つられて楽しそうに葵も笑っている。









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