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翼の記憶
【ファンタジー 恋愛小説】

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雷帝T-1

三人の神官たちが王宮の生活に慣れてきた頃・・・。






地上に目を向けていた葵が何かを感じ、上空を仰いだ。ほどなくしてそれぞれの神官たちも違和感を覚え同じく空を見上げる。






「・・・なんだろう・・・」






首を傾げる葵の傍には九条と大和の姿があった。仙水も王宮から出てきて同じように空を見上げる。





「葵様・・・、これは・・・・」





「うん・・・ひずみ?その向こうから何か大きな力が近づいてくる・・・」






『・・・敵ではないようだな』






オーロラのように鮮やかな光が煌いた。目を見張り凝視していると・・・






―――――・・・バサッ






葵のように白い翼をもった者が王宮に向けて降下してくる。






「・・・っ!!
葵と同じ翼をもつ者が他にも・・・」






大和が葵の前にたち刀に手をかけた。
一瞬、葵はその者と目があった気がした。鋭いその眼差しは葵と同じ、心の強さを表していた。





そのまま中庭に降りてくるかと思いきや、律儀にも王宮の門のほうへ向かっている。






急いで四人は門へと走った。
(もしかして・・・)






『・・・かもしれぬな』






神官が門を開けようとすると、外側から声がかかった。






「おーい、妖しいもんじゃねぇから開けてくれー」





なんともフレンドリーな物言いに、葵は小さく笑ってしまった。葵の笑う声が聞こえたのか、外側にいる彼もつられて笑っている。





門が開けられたと同時に・・・






「わぁーーーっ!!!」






大声をあげられ、驚きに葵が目を丸くした。彼はどうやら驚かせようとしたらしいが、九条の顔が引きつっている。






「貴様・・・無礼にも程があるぞ」






瞳の温度が下がった九条をなだめた葵が前へ進み出た。彼は葵の翼をみて小さく驚きの声をあげている。






「ようこそいらっしゃいました、私は葵と申します」






ドレスの裾をもって葵はお辞儀をした。ゆっくり顔をあげるとオレンジ色の癖のある短髪に、同色の鋭い瞳をもった大きな青年の堂々とした姿が目に入った。そして背中には大きな白い翼をもっている。





「俺は雷の国の王、ゼンだ!!よろしくな葵っ!!」




バシバシと肩を叩かれ、葵はまた笑った。



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