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THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-6



『へえー。9割合格の子、まだ居たんだね』
「そーなんだよー・・。ちょっとびっくりした」

その日の夜。瑞稀は約3週間ぶりに秋乃と電話で話し込んでいた。
基本的に電話が嫌いな瑞稀だが、秋乃だけは特別だった。特に嫌とも感じない。
ちなみに話題はお互いの中学がどういうものかという話。

『てか、瑞稀って入試9割合格だったんだ。』
「あれ?言ってなかったっけ・・」
『聞いてないよ。ウチでもそんな点数取れなかったのに、凄いね』
「いやいや、偶然お兄ちゃんと一緒にやったところが出たからだよ」

電話の相手が目の前にいる訳でもないのに、思わず自分の胸元で受話器を持っていない左手を強く振る。ブンブンという効果音が電話先にでも聞こえそうだ。

『で?その紫波さんとはどう?友達になれそ?』
「うん・・・でもまだちょっと・・」
『そっかー・・珍しいね、瑞稀がそんなになるの』
「こんなんだよ?・・拓斗の時も・・アイツからだったし・・」
『・・・そっか。』

瑞稀のトーンが下がった。それに伴って、秋乃も言葉を失い、沈黙が流れた。
卒業式が終わったあの夜。秋乃に電話をして、事情を話して泣いた。
拓斗に言われた言葉、拓斗の言葉を最後まで聞かずに怒鳴ったこと、自分から別れを切り出したこと、今までのお礼をしなければならなかったのにたくさん傷付けてしまったこと。今更、直接会って言葉を聞けないということ。
ただ秋乃は黙って言葉を聞いてくれた。そして、「今は、距離をとっても良いんじゃない?」と言った。ただ、それだけ。それだけが、罪悪感に苛まれる瑞稀の心を軽くした。


『そいえば、部活どうするの?』
「え?あぁ・・吹奏楽部に入ろうかなって」
『変わってないんだ。やっぱ、トランペット?』
「うん、勿論。秋乃は?」
『美術部。』
「そっかー。秋乃、絵好きだもんね!」

最初からトランペット奏者として吹奏楽部に入部希望だった瑞稀は春休みに見学したことですでに新入部員として扱われていた。まだちゃんと部内で吹いたわけでないから、明日の部活で実力お披露目となる。
一方の秋乃。秋乃は絵が好きで、いつも図工の時間に書いていた絵は先生などに高く評価されていた。

『ま、瑞稀なら大丈夫っしょ。頑張って』

秋乃のそんな言葉で、電話は終わった。瑞稀は、受話器を置くと自分の部屋に戻って眠りについた。



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