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翼の記憶
【ファンタジー 恋愛小説】

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心強き者-1

驚く葵はその青年に腕を引かれ火の中を駆け抜ける。






火の勢いは衰えるどころか激しく燃え広がり、あたりには灼熱の風が吹き荒れていた。






「・・・っっ」






肌を刺すような熱風に耐えられず、葵は手の甲で額を抑えた。振り返った青年は自分の衣を脱いで葵へとかぶせた。






「もう少しの辛抱だ、頑張れ!!」






「・・・は、はいっ!!」






頭から衣をかぶった葵は自分の手を引く紫色の髪の青年の背中を嬉しそうに眺めていた。



(なんて強く優しい人・・・この方は民の中心となり皆を引っ張っていける人だわ・・・)






やっとのことで川に辿りつくと、たくさんの人達がすでに避難して集まっていた。






「大和・・・!!無事だったか!!」






そう声のした方を見ると彼と同じくらいの年頃の青年がこちらへ小走りに近づいてきた。そして、まだ手を繋いだままの私たちの手元をみて・・・






「あ・・・、もしかして娘さんは大和のいい人かい?」






はっとした私は急いで手を離し、頭からかぶっていた衣を脱いで彼らに頭を下げた。






「助けていただき、ありがとうございます・・・貴方様のおかげで・・・」






と葵が青年に微笑みを向けると、大和と呼ばれた青年とその隣の青年は瞬きひとつせずこちらを凝視していた。






「・・・あ、あの・・・」






葵が不安になって彼らの様子をうかがっていると、我に返った大和の頬が真っ赤に染まった。






「しっ、失礼いたしました・・・!!
先程はあまりにも夢中で、あなたの顔をよく見ていなかったものだから・・・」





大和は恥ずかしそうにうつむいて視線をそらしてしまった。隣の青年は必死に笑いをこらえている。






おどおどしている彼の向こうの木の傍で嫌な気配を感じ葵は目を凝らした。




(まさか・・・)






葵が彼らの横をすり抜け、森のほうへ足を向けると大和が首を傾げた。






「・・・どうしました?何か・・・・」






「・・・そこの木の陰に何か嫌な気配を感じて・・・」






「・・・俺が行きます」






葵の肩に手を置き、大和がカタナに手を添えて森へと注意深く近づいていく。





と、そのとき町のほうから爆音が聞こえて民たちは悲鳴をあげた。その一瞬の隙をついて・・・




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