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『tetsu』
【その他 官能小説】

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『tetsu』-3

「あっ、あたし何語ってんだろ!はずかしぃ〜。とにかく武田さんにも運命の人はいるってことだよ!」
「ははっ。運命の人か…。俺にもいるといいな。でも、単純ってなんだよ〜!(笑)」
「ごめんごめん!あっ、コンビニ寄らない?」
私は自分が言ったことに顔が赤くなってしまいそうだったので、急に話をそらしてしまった。私は彼の運命の人が自分だったらいいのに…と、また都合のいいことを考えていた。さっき彼を励ましていた自分とは違う自分がとてもいやらしく思えた。
私達は、彼が予約をしていたホテルへと向かっていた。現地では徒歩や電車で観光しようと思っていたので、とりあえず車と荷物を置きに行くことにしたのだ。
「武田様、今日から一泊のご予定ですね」
「はい」
「こちらがお部屋になっております。ごゆっくりお過ごしくださいませ」

私達がホテルの部屋へ着いたのはもう日が暮れる時間だった。部屋に光を射し込んでいる大きな窓からは、今までに見たことがないほどキレイな夕日が見えた。いや、隣で一緒に見ている人が彼だからそう思えたのかもしれない…。
「広い部屋だね〜!眺めもステキだし、来てよかったぁ。」
部屋は窓が大きいせいか開放感があり、とても素敵だった。壁際には大きなダブルベッドが置かれていた。彼女と泊まる予定をしていたのだから、一緒なベッドで寝ようと考えていたのは当たり前のことだ。でも実際は、友達にも満たない関係の私と二人。夜はどう過ごすのだろう。また私の都合のいい、いやらしい妄想が始まりそうだったその時、
「今からどうする?」
彼の声で一気に現実に引き戻された。
「えっ?あぁ、今からかぁ。もう今日は武田さんも長時間の運転で疲れてるでしょ?ゴハン食べに行って帰ってこよっか。」
「そうだな。今日ゆっくりして明日いろんなトコ遊びに行くか!」
彼は楽しそうにそう言ってくれた。本心は分からないが、私といることで嫌な思いはさせたくなかったのでホッとした。
ホテルの近くは多くのお店が並んでおり、薄暗くなってきた辺りを眩しいほど照らしていた。私達はその雰囲気も楽しみながら、一軒の中華料理屋で食事をとった。
空腹を満たし、お店の外に出た時はすっかり日は落ちていた。帰りに私達はコンビニに寄ることにした。
「あっこれ新発売だって!俺これ飲もうかな〜。他に何買う?」
彼は子供のように私に話しかけてくれた。私は嬉しくて笑顔が絶えなかった。彼と二人でお菓子や飲み物を選んで、ホテルに帰ることにした。
帰り道、私は彼の少し後ろを歩いていた。私の方が歩幅が小さいので、どうしても遅れてしまうのだ。
「ごめん、歩くの早かった?」
彼はそれに気付いて声をかけてくれた。
「ううん、あたしが遅いの。ごめんね!」
「俺が合わせるよ。疲れてない?」
彼はそう言うと同時に左手を私に差しのべた。
「えっ!大丈夫大丈夫!疲れてないよ。」
私はその手を無視して先に歩き出そうとした。でも彼は私の手を後ろからつかんだ。私はびっくりして声が出なかった。
「危ないから」
彼はそう言って歩き出した。私はつないだ手から振動が伝わってしまいそうなくらい、ドキドキしていた。これはどう取ればいいの?ほんとに危ないってだけで、私の手を握ってくれてるの?いろんな思いが私の頭の中を駆け巡った。帰りの道はあっという間に過ぎていった。
ホテルに着くと二人でソファーに座り一息ついた。私はまだドキドキが止まらないでいた。
「先に風呂入れば?」
「えっ、お風呂?武田さん先入ればいいよ!」
「じゃぁ遠慮なく。疲れ落とさないと明日遊べないもんな!」
彼はそう言って浴室に入っていった。私はついお風呂という言葉に反応してしまった。何かあるわけでもないのに顔が赤くなっていくのが分かる。私は心を落ち着かせ彼が出てくるのを待った。
30分もしないうちに彼は浴室から出てきた。彼はホテルに用意されていた浴衣に身を包み、髪がまだ濡れた姿で現れた。私の心は落ち着くどころか、また激しく動き始めてしまった。
「はぁ〜気持良かった。浴衣ちっちゃいんだけど(笑)」
彼はそう言って、手を大きく広げてみせた。彼のすらりと伸びた長い腕と足は、浴衣を小さく見せた。
「あはっ!ほんとだぁ。武田さんでかいからな〜。じゃぁ私も入ってくるね。」
私は浴室に向かった。浴室はまだ湯気が立ち込めていて、彼がついさっきまでいたことを物語っていた。私はやっぱり彼と夜を過ごすことを意識してしまった。さっき彼とつながっていた手を見つめていると、体が熱くなってきた。
私はその思いを立ちきるように頭から熱いシャワーを浴びた。彼と一緒にいるといやらしいことばかり考えてしまう。それが現実になることがないのは分かっているのに…。
私は体を念入りに洗った。タオルで体を拭き、私も浴衣をはおった。浴室から出ると、彼はソファーに座りテレビを見ていた。


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