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愛しさと渇望
【大人 恋愛小説】

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営業部三課課長、出水千穂-2

「物に当たるなんて、思春期の女子ですか?」

桜木が呆れたように呟き、持っていた書類を出水の前に放り出した。

「うるさい」

出水はデスクに放り出された書類を片手でつかみ、おずおずと横から差し出されたカフェラテを奪うように口へ持っていく。
アイスカフェラテはそのまま半分ほど出水の胃に流れていった。

「豪快、ってやつですね」

桜木は睨まれるのも全く気にせず、出水が目を通している書類に指を指した。

「昨日指摘されたとこ、チーム内で煮詰めてきたんです。妥協せずに持っていくのは簡単ですが、それを補うための、、」
「資金が足りない、のね」
「はい」

先程の空気は一気に仕事仕様へと変わる。
出水は桜木たちを率いる営業部三課の課長。つまりは彼女の首を縦に振らせるのが桜木の仕事である。

「参ったね。社内コンペにこんな予算は組めない」

そうきっぱり言い切って、出水は氷を噛み砕く。
ガリガリと咀嚼する音は口を閉じても回りに聞こえるほどだ。

「イズミ、煙草よりましだけど、威嚇するように氷を噛み砕かない」

溜め息を吐きながら桜木が苦笑う。そして意味深に微笑み、さらに書類に指を指した。

「モデルを起用するから人件費が嵩張る。だから予算が馬鹿高くなる。だが、販売部の威信をかけた新作発表会は潰せない。」
「それがコンセプトだ。そんなの馬鹿でも知っている。だから何?」
「そう、だから部内の女子諸君にモデルになってもらえば」
「……却下」

はぁ、と今度は出水が溜め息をはく。
下着メーカーの新作発表会、もちろんモデルは新作の下着を身に纏いランウェイを歩く。
それを毎日仕事を共にしてる女子社員に頼むなんて、セクハラ甚だしいではないか!

「下着姿を披露して、翌日普通の顔で仕事に来れる神経は、皆持ち合わせているはずかないでしょ?」
「水着だと思えば…」


「馬鹿にしてるのか!!!」


怒鳴り、デスクに拳を降り下ろす。
素晴らしい破壊音と共に、カフェラテが無惨に床へと落下。カップの蓋が圧力に耐えきれず変形し、中身を外へと流出させている。

辺りは殺伐とし、そして見事に雑然としていた。






◇◇◇◇◇◇


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