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愛しさと渇望
【大人 恋愛小説】

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営業部三課課長、出水千穂-1

「カフェラテのトール頼んだでしょ、五分以内に買い直してきて」
長い髪はいつ櫛を通したか解らないくらい乱れているのに、それをさらに自らくしゃくしゃに掻き乱しながら出水は叫んだ。

「イズミ、そんな風に怒鳴っても無駄だとおもうよ?」

「イズミ、じゃない、出水。アクセントを後ろに持っていかないで。可愛らしいイズミチャンじゃないんだから。これは名字よ、バカにしてんの?自分に似合わないなんて百も承知なんだら、侮辱すんならそのケンカ、高く買ってあげるけど?」

一気に捲し立て、出水はどかりと椅子に腰を下ろす。
その姿は女性的な全ての要素を丸きり捨て去った仕草で、いや、出水本人の姿がそれを写し出している。なんというか、そう、つまり。
戸籍上女性で、辛うじて髪を伸ばした、そんな人。

「そんな怒んないでよ、スマーイル、ね?」

負けずに可愛らしく笑う桜木は、彼女、出水の部下でsunsetSという下着メーカーの営業部三課のチーフマネージャー。
彼は睨まれるのを感じながらも負けずに笑う。
そんな二人のやり取りは一触即発のようで、いや、即発なのは出水だけなのだが、皆遠巻きに見て冷や汗を浮かべていた。

「桜木、同期を理由に自由にさせておいたけど、どうしてもクビにして欲しい?あんたみたいな高学歴なら再就職も選びたい放題でしょう?」
「まさか!イズミ課長、ジョークが面白くないですよ!」
「お前……いっぺん死んでみるか?」
「だからイズミ、その台詞、どこかの任侠映画がパチンコくらいしか言わないって!」
「ふんっ」

出水は怒りを言葉ではなく、鼻息と共にデスクを蹴り飛ばした。
座った状態からだったので威力はあまりないが、イズミのデスクには新しい凹みが増え、整頓されていた書類が滝のように崩れた。



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