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愛しさと渇望
【大人 恋愛小説】

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戸惑いの昼休み、鹿嶋あやめ-1

指先は薄いベージュ。卵形に切り揃えられ、小指のピンキーリングには誕生石のエメラルドが小さく光る。
書類に目を通しながらブラインドタッチ。カタカタとキーボードが音をたて、画面に文字が次々と足されていく。

「カスミ先輩、お昼一緒にいかがです?」

小さく声をかけて、彼女は先輩の斎川霞ことカスミ先輩の様子を探る。
ぱっちりとした目元はグリーンのグラデーションアイカラー。唇はオレンジ系でグロスが艶やかに光り、派手過ぎず地味過ぎず、洗練された女らしさを感じる。
溜め息が出るほどパーフェクトな先輩だ、と。

「いいよ。社食でもいい?久々に定食系食べたいかも」

そういって鮮やかに笑う。
気さくで、サバサバしていて、その上美人。
非の打ち様のない人だと彼女、鹿嶋あやめはそう思う。



二人、席をたって昼休みの食堂へと向かう。
外食組やお弁当組が多々いるものの、12フロアを有するsunsetSの社員数は半端ない。1フロアを社食に当てているもの、混雑はいつものこと。
あやめは大学時代を思い出す。昼時は学生も社会人も似たようなものだ。
お喋りに花を咲かせる人、黙々と流し込むように食べる人、食べながら携帯を開き自分の世界に浸る人、それぞれが孤立し、だけど密集してこの場に押し込まれている。そんな感じだ。

「今日も混んでるねー。席二つ空いてるとこはどこかなぁー」

先輩がきょろきょろと辺りを伺う。受け渡し口から一番遠い場所に数席空いていたらしい。
先輩は私の手から食券と抜き取ると、空いている席を指差した。

「そっちで待ってて?持っていってあげるから」
「でも、トレイ二つで先輩大変になっちゃ……」
「だぁいじょうぶ、ほら席とられる方が悲惨よ」

ニコッと微笑んで有無も言わさず背中を押す。
私はすまない気持ちで一杯だったけど、頷いて席へと急ぐ。

ショール持ってくれば良かった。そしたら椅子にかけておけるのに。
そんな風に思いながら、何か置いておけるものはないかと考える。
カスミ先輩に二つもトレイ持たせられないし、私頼んだのきつねうどんなんだもん!

絶対危うい。
そう振り返ったがすべては杞憂に終わっていた。


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