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花火
【女性向け 官能小説】

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サプライズ-2

「愛美(マナミ)、明日っていうかもう今日か。今日明日何か予定あるか?」

走り出した井上さん…和生(カズキ)の車の助手席。
オフィスを離れると名前で呼び合う、そういう仲。
お互い社内恋愛は『周囲に迷惑がかかりやすいからこっそりするものだ』という考えで。

「特に何も」

「じゃぁ昼少し前に迎えに行ってもいい?」

…迎えに来る、ってことは今日は泊まって行ってくれないのか

ちょっと残念に思う気持ちを隠して、明るく訊き返す。

「うん。どこに行くの?」

「ヒミツ。あ、泊まりの用意しといて」

運転席の和生は、何かイタズラを企んでいる子供みたいな横顔。

「泊まり?」

「イヤ?」

「ううん、嬉しい」

素直に、嬉しいと思った。
このところ私だけじゃなくて、和生も忙しくてなかなか会社以外で顔を合わせることが出来なかったから。

「だから今日は帰るぞ。明日いっぱい可愛がってやるから」

ちょっとエロい顔で、助手席の私の頭を左手で撫でる。

…ちゃんとお見通し、ってワケですか。
 嬉しいような、恥ずかしいような…

アパートの前に車を停めると、優しいキスをして和生は帰っていった。
帰ってから手早くメイクを落とし、シャワーを浴びて速攻でベッドの中へ。
休日にしては早めに目覚ましをかけて家事をしながら泊まりで出かける用意をする。

「今から家出ようと思うけど、大丈夫か?」

そう和生から電話がかかってくるかなり前にはシャワーも浴びてメイクも済ませていつでも出れる状態になっていた。

…どれだけ今日のデートを楽しみにしているんだ、私は。

楽しみにしていたはずなのに、和生の車が高速道路に入った頃に猛烈な眠気に襲われてしまった。
サービスエリアに寄って、コーヒーを買い、眠気覚ましのガムを噛んでも、欠伸を押し殺すのにものすごい労力を使う。

「愛美、寝てていいよ」

運転席で和生は笑いを噛み殺している。

「で、でも…」

私には運転免許がないから、仮眠したあと運転交代なんて芸当もできないことが申し訳なくて。

「あのなぁ、少しは甘えなさい。愛美の普段の状況もわかってるし、理解してるんだから。少しシート倒して寝とけって。じゃないと夜までカラダ持たないだろ?」

「むしろそっちの心配?」

純粋に心配してくれているのかと思いきや、エロ顔全開での最後の一言に思わず頬が膨らんでしまう。

「言ったろ?明日いっぱい可愛がってやる、って」

私の抗議なんてものともせず。
いつもどこまでも余裕なのだ、和生は。
インターで有料道路に入って直線になると、空いた左手で優しく頭を撫でてくれる。

「いいから寝てろ、な?」

「うん…じゃぁお言葉に甘えて…ごめんね」

あまり意固地になるのもどうかと思い、リクライニングを倒して目を閉じた。
『明日いっぱい可愛がってやる』の内容がいろんな意味で気にならないわけじゃなくて、そもそもどこに行くのかも教えてもらってないし、なんてとりとめのないことを考えているうちに、いつの間にか私は眠ってしまったらしい。

「まーなーみ、起きろ。着いたぞー」

優しく肩を叩かれて、目を開けた瞬間和生に唇を奪われた。

「うわっ」

「うわってなんだ、うわって。もっと色っぽい目覚め方はないのか?」

「だ、だってびっくりしたんだもんっ」

「悪い、悪い」

そう笑うけど、絶対そう思ってないよ、和生ってば。

「ほれ、着いた。今日はここ泊まるぞ」

「え?」

海沿いに立つ旅館らしい。
和生に言われるまま車から降り、和生の後をついてフロントに向かう。
仲居さんに案内された部屋は、海の見える露天風呂付の部屋だった。
お茶とお茶菓子を口にするまで、まだ半分夢の中にいるんじゃないかと思うほど。

「ご予約いただきましたアロマエステですが、全身のコースでよろしいですか?」

仲居さんの質問に、和生が頷く。
きょとん、とする私に和生が説明してくれて、その様子を仲居さんがニコニコと眺めていた。
疲れがたまりにたまっている私のために、リンパドレナージュの予約までしておいてくれたらしい。
私がリンパドレナージュを受けている間、和生は大浴場を満喫してきたようだ。

「どうだった?」

「すっごい気持ちよかった。疲れが取れた気がする」

「って爆睡してたんだろ?」

「バレた?でもほんと気持ちよかったの。ありがとう」

「そのセリフは夜に聞かせて欲しいな」

またエロ顔全開になってるし。
オフィスでは絶対に観ることの出来ない表情だけど。

「もうっ、和生ってばソレばっかり。感謝の気持ちが台無し!」

「冗談だよ。さ、メシまで時間があるだろうから、愛美も大浴場行ってくれば?部屋の露天風呂はあとでゆっくり楽しむことにしてさ。時間的にも夕日がすごそうだし」

「うん。和生は?」

「オレは少しココでのんびりしてるよ」

「和生もずっと忙しくて疲れてたのに、ごめんね。運転代わってあげることも出来ないし…」

「気にすんなって。今日は愛美のために計画したんだから愛美が喜んでくれればオレはそれで嬉しいんだって」

「ありがと…」

和生の頬に感謝のキスをして、大浴場へ向かった。
女性には色浴衣を無料で貸し出してくれるというので、せっかくなのでそれを着て部屋に戻る。

「愛美の浴衣姿、初めて見るけど…いいな。なんか色っぽい」

「普段は『愛美には色気が足らない』が口癖なのに?」

「ちょっと驚いた…っつーか、今すぐ押し倒したいくらい色っぽい」

「和生ってば、ほんとにもうっ」

「でもまだ楽しみは取っておかないとな。今押し倒してもすぐ食事運ばれてきそうだし」


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