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カラスの巣(短編小説)
【熟女/人妻 官能小説】

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第12話 ギフト〜永遠の宝物〜-2

「だったら、どうして今日は御一緒じゃないの?」

「もう、陽一は居ないんだよ」

「い・・居ないって・・・陽一さんが居ないってどういう事なの!?」

玲子は驚きのあまり、川端の肩を掴んで迫った。

「あっ・・・ちょっと言い方が紛らわしかったか・・・すまん、すまん。そうじゃなくて・・・昨日付で、本社の方に引き抜かれたんだ・・・今回の仕事の件を買われてな。まあ・・・たまたまあちらの方も人材不足で、少しの間だけどな・・・・・・」

「そんな・・・だったらその前に、お顔だけでもお伺いしたかったのに・・・・・・」

「あいつに取っては、これから始まったばかりなんだろう・・・・・・。だから、まだまだママには甘えられないって、頑張ってるんだよ・・・きっと・・・・・。あっ・・・そうだ・・・陽一から預かり物があったんだ」

川端は、茶色のカバンと一緒にソファーの隣に置いた、白い紙袋を取ってテーブルに上げた。

「これをママにって・・・俺も中身は知らないんだが、良かったら開けてみれば?」

「陽一さんが私に?・・・いったい何かしら?」

玲子が紙袋を開けると、赤い包装紙とピンクのリボンで包装された贈り物が出てきた。
明らかに陽一からの玲子に対する贈り物で、それに胸を高鳴らせながら、一つ一つを丁寧に開けていた。

「わ〜・・・素敵だわ・・・・・・・」

玲子が、両手で振りかざすと、黒く光り輝くチャイナドレスだった。

「この肌触りはシルクね・・・それに、この刺繍なんかも縫い目がきめ細かくて・・・普段、私が着ている安物とは全然違う。きっと・・・お高い代物だわ。私なんか良いのかしら・・・・・・」

陽一が贈ったチャイナドレスは、100%シルク素材で金の絹糸で竜の絵がきめ細かく刺繍された高級な物だった。
さらに、今までのノースリーブタイプから半袖の為に、どこか清楚にもまとめられていた。
しかし、ロングタイプの深いスリットだけは相変わらずで、陽一を惑わした黒い誘惑も想像できた。

「ふふ・・・せっかくだから着替えてみれば良いじゃないか?。ママのチャイナドレス姿は久々だから、俺にも見せてくれよ」

「そうね・・・だったら、少しお持ち下さる?」

玲子は、チャイドレスを胸に抱えると、急いで階段の方へと消えて行った。
その待ってる間にも、手持ち無沙汰になった川端は、チャイナドレスを包んでいた包装紙や紙袋を覗いて時間を潰していた。

「やだ〜・・・ママだけずる〜い」

しばらくすると、玲子は二階から降りてきて、それに気付いたピンクのスーツを着た店の若い女が、冗談めいて剣幕を立てた。

「本当よ・・・ママだけ抜け駆けするなんて、ルール違反だわ」

もう一人の、水色のスーツを着た店の若い女も、それにのってきた。

「ふふ・・・ごめんね。今日だけ私のわがまま許してよ」

玲子は、笑みを浮かべながらも、申し訳なさそうに手を合わせた。

「でも・・・素敵なチャイナドレスよね。相当高かったんじゃないの?・・・どうしたのこれ?」

水色のスーツの女は、カウンターの客の相手に戻るが、ピンクのスーツの女の方は、しつこく玲子に尋ねた。

「あっ・・・もしかして川端さん?」

ピンクのスーツの女は、テーブル席の川端を見ながら尋ねた。

「違うのよ・・・そうじゃなくて・・・・・。ごめんなさい・・・急いでるから後にして・・・・・・」

玲子も一緒に、川端の方に視線を送るが、手持ち無沙汰そうにしているのを気付くと、慌てる様に向かった。

「やっぱり、そうなんじゃない・・・・・・」

まるで、川端に見せ付けるかのようにテーブル席に戻る玲子の後ろ姿を見て、ピンクのスーツの女はポツリと呟いた。

「おまたせしました。どうかしら?・・・・・ふふ」

玲子は軽くポーズを決めて、川端の前に現れた。

「お〜・・・凄く良いじゃないか・・・やっぱりママはチャイナドレスが一番似合ってるよ・・・・・・。せっかくだから、隣に座ってもう一度飲み直そうよ」

「分かったわ・・・陽一さんの新たな門出も祝って二人で乾杯しましょう」

川端に促されると、玲子はまた隣に座った。

「もう・・・ママはすぐ陽一なんだから・・・俺とママのこれからの為にも忘れないでくれよ」

「私と川端さんのこれからに、何があるのかしら?」

玲子は、川端の相手をしながらも手際よく水割りを作っていた。

「ふふ・・・二人だけのこれからの愛を誓おうよ?」

「それは、お家に帰ってから、奥様にでも言ってくださいな」

「またそうやって、女房を出す・・・・・・」

「はいはい・・・それは良いから、早く乾杯しましょう」

カチン・・・・・・

二人は、グラスを重ねた。
しばらく、お互い会話を交わす事無く、それぞれ物思いにふけていた。

「しかし・・・何だか寂しくなるわね」

そのしんみりとした空気を割るかのように、玲子が先に口を開いた。

「ふふ・・・ママは陽一に首ったけか・・・・・・」

「だって・・・もう会えないんじゃないかと思って・・・・・・。それに・・・チャイナドレス以外、手紙も何も添えらてないし・・・もしかして・・・これは陽一さんのお別れの置き土産なのかしら?」

「ママも心配性だね。陽一を信じていれば、必ずここに戻って来るって・・・だから・・・その時は、このチャイナドレスで出迎えてやれば良いじゃないか」

「ええ・・・そうよね・・・私が陽一さんを信じてあげなきゃね。ありがとう川端さん・・・何だか少しだけ元気が出たわ」


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