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カラスの巣(短編小説)
【熟女/人妻 官能小説】

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最終話 カラスの巣-2


不穏な空気を察したピンクのスーツの女は、雰囲気を切り替えようとカラオケの曲本を客の二人に手渡していた。

「あっ!・・・あっ!・・・あっ!・・・陽一さん良いわ!・・・そのリズムでお願い!・・・私も陽一さんに合わせるから、二人でデュエットしましょう!・・・・・・」

玲子もまた、雰囲気を切り替えようとスイッチを切り替えていた。
その激しい振動にたまらず、パンティーストッキングとショーツを残した片脚は、あの時と同じように、天井へと高々と上がった。
黒いパンティーストッキングと一緒になびく白いショーツのコントラストが、まるで白旗を掲げて降参を促すようにも見えた。
玲子自身も同じように限界を感じて、至福への撤退を求めていた。
やがて、玲子の脚がシンクロナイズドスイミングのような艶やかな曲線を描くと、あの時の陽一にもシンクロした。

・・・・・・ママ・・・そろそろ良いですか?・・・・・・

「良いのよ・・・はあ・・・はあ・・・遠慮しないで・・・・一緒に迎えましょう・・・はあ・・・はあ・・・・・」

玲子は、あの時の陽一と頂点を確認するかのように、スイッチを戻して、ゆっくりとバイブレーターをうならせた。

・・・・・・ママ!・・・ママ!・・・・・・

あの時の陽一は間違いなく、頂点を迎えようと最後を振り絞った。

「あっ!・・・あっ!・・・陽一さん!・・・陽一さ〜ん!」

玲子は、スイッチを再び切り替えてバイブレータを激しく振動させると、頂点へと向けて腰つきも激しくなった。

「ほら、見てみろよ・・・絶対地震だって・・・・・・」

「たく・・・さっきからうるせ〜なお前も・・・曲を選んでる最中なんだから、少しは静かにしろよ。恭子ちゃん・・・これなんかどう?」

客の言う通りに、棚のボトルは今まで以上に激しく揺れていたが、連添いの客の方はそれを無視して、ピンクのスーツの女とカラオケの選曲に夢中だった。

「やばい・・・もう落ちるって!」

「陽一さ〜ん!!!!!!・・・・・・」

・・・・・・ガシャン!・・・・・・

玲子は頂点を迎えると、身体を反ってその場に崩れた。
バイブレーターの根元からは、玲子の潤いが流れ落ちてシーツを汚していた。
それは、玲子の涙を代弁してるかのように、溢れ出るようだった。
もう玲子には、悲しみで泣くほどの心情は無かった。
今まで歩んできた、過酷な道のりを考えれば、陽一に対する愛しさも、たやすい事だった。
それでも、数ヶ月前にお互いの気持ちがぶつかり合い、肌を交わし合う事で答えを見出した愛の巣が懐かしく、思わずうつ伏せでピンクのダブルベッドに頬擦り合わせていた。

しばらくすると、自分自身に埋まるバイブレーターを、玲子はゆっくりと抜いた。
さらに、ウェットティッシュで清めて香水を噴霧すると、ショーツとパンティーストッキングで武装した。
そのまま鏡の前に座り、髪をたくし上げてブローチでまとめると、男を魅惑するフェイスペイントでカモフラージュした。
すでに身に纏っている、陽一から贈られた黒いチャイナドレスは、男を仕留める戦闘服として玲子を引き立たせていた。
陽一に対する思いを断ち切ろうと、玲子の本能は新たなる至福を求めていたのだ。

黒いカラスは、再び光り輝く物を探そうと、地上へと舞い降りた。

「あっ・・・もう大丈夫なのママ?」

玲子がニ階から降りて来ると、ピンクのスーツの女は尋ねた。

「ええ・・・もう大丈夫よ。少し寝たから、疲れが取れたみたいだわ」

「それなら良かった・・・・・。あっ・・・そうだ・・・たった今、地震があったみたいだけどママは気付いた?」

「えっ・・・私?。そ・・そうね・・・今まで寝ていたから、地震があったかどうかは・・・・・・」

「でもね・・・そこの棚にあったボトルが、突然落ちてきたのよ」

ピンクのスーツの女が指摘した方に視線を送ると、水色のスーツの女は割れたボトルの後片付けに追われていた。

「初めに気づいてくれたのは、こちらのお客様なんだけどね」

その客は、30代前半くらいの男で、明らかに肉体労働の仕事に付いている身なりだった。
言葉使いは丁寧ながらも、茶色に染められた長い髪に、顎髭だけ伸びた身だしなみが、肉食系を思わせた。
さらに、VネックのTシャツから覗く胸元は引き締まった身体を想像させて、身に付けたシルバーのネックレスと共に光り輝く様に見えた。
玲子はすぐさま、そのたくましい身体に包まれて、至福の表情を見せる自分の情景を思い描いた。

「ええ・・・初めは少し揺れていたんですけど・・・いきなり激しくなったと思ったら、ボトルが床に落ちたんです」

「だからよ・・・それは偶然なんだって・・・・・・。お前は、ちょっと飲み過ぎなんだよ・・・・・・」

相変わらず連添いの男は、30代前半の男に否定的だった。

「それでしたら、お二階の方で少しお休みになられたら?・・・・・・」

所詮はただの黒いカラス・・・光り輝く物を見れば巣に持ち帰るだけ・・・・・・。


・・・・・・カラン・・・・・・


・・・・・・突如、頬に冷たい感触が伝うと、その男は暗闇から光を得た・・・・・・


・・・・・・ふふ・・・お目覚めはいかが?・・・・・・


−完−


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