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私の夏
【青春 恋愛小説】

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失恋-2

 ナツくん…

 誰も居ないベンチを見ながら、あたしの心はナツくんを傷つけたことによる悲しみの感情で一杯になった。

 探さなくちゃ。

 あたしは、ナツくんを探すために再び街中の喧騒へ向かって駆け出した。

 悲しみの感情を抱えながら一時間ほど街中をあても無くウロウロ探したけれど、結局ナツくんの姿を見つけだすことは出来なかった。

 あたしは2人が再会したステーキハウスの前で立ち止まった。

 今日の再会は、辛うじてここでつながった縁に寄るモノ。

 あたしはその2人の縁を、あたし自身の拒絶によって無くしてしまったのかもしれない。

 あたしはそう思った途端、その思いはさらに発展していってしまい、再び涙が溢れてきた。

 これで良かったかもしれない。

 もし、2人の縁が途切れてなくて、これから彼と付き合うことが有ったとしても、あたしの我ままさ故に、その都度純粋な彼を傷つけて、さらに自分自身も傷つけるかもしれない。発展した思いはそういう恐れにも似た感情だった。

 見つからなくてよかったんだ。彼のためにも自分のためにも。

 あたしは今の辛さから逃れるために、自分が納得できるように自分自身にそう言い聞かせた。

 言い聞かせたことによりナツくんを探す意味を失い、あたしは泣き顔のままホテルに戻った。

 あたしの帰りを待っていたトモちゃんとユーコを慌てさせてしまったけど、ホテルに帰るまでにどうしても涙が止まらなかったのだ。

「ナッちゃん、どうしたん!」

「ナッちゃん、大丈夫なん?」

 友だちの声を聞くと感極まってきてさらに大粒の涙が溢れてきた。

「わ――――」

「ナッちゃん、何があったん?」

「ナッちゃんって?」

 オロオロする2人を余所にあたしはわんわんと子供のように泣き続けた。

「何かされたん?」

 しばらくしてあたしが落ち着いたのを確認すると、 当然ながらそれを聞かれた。

「…」

 俯くばかりで何も言えなかった。

「黙ってたら解らへんよ、お願いやから言うて」

「…」

 俯いたまま首を横に振る。

「ナッちゃん?」

「もういいねん…」

 あたしは言った。

「もういいって、どういう事?」

「縁が無かってん…」

「何言うてんの、夕方は凄い縁やったやんか」

「その縁をあたしが拒絶してしもてん…」

 友だち2人はその言葉を聞いて、顔を見合わせた。

「拒絶したって、どういうことなん?」

「うん、ナツくんに酷いこと言うて逃げてきてん」

「なんて言ったの?」

「あたしに付きまとわんといてって…」

「じゃあ、ナツくんのことは忘れるって事?」

「うん、会わせる顔無いし、もう会わん方がええねん」

「ナッちゃんの心の声がそう言うてんねんな」

「…」

 あたしは答えられずに俯いた。

「もう一回聞くよ、心にウソをついてないねんな」

「うん」

 咄嗟に出た言葉がウソなのかは、自分でも解らなかった。

「それやったら、もうウジウジしたらアカンよ」

「自分できめた事やからな」

 2人の友達は、もう一度顔を見合わせた後に、あたしに念を押した。

「うん…」

 あたしはこの時になって初めて、友だち1人足りないことに気付いた。

「あれ?ミヤちんは?」

「いつもの通り。街の見物」

「あいつは疲れを知らん」

 2人の友達のその言葉で少し心が軽くなった。ミヤちんにはいつも救われる。

「あたしもう大丈夫、泣いて汗かいたからお風呂入ってくるね」

 あたしはそう言って友人たちの心配する視線から逃れた。

 あたしはいつもより長い時間シャワーを浴び続けた。そうすることで色んな思いが自分から流れでることを期待していた。

 流れるお湯を目で追うと、いまだに成長途中の小ぶりな胸が目に入る。ナツくんの手のひらの体温が思い出されて、また涙が溢れてきた。あたしは慌ててシャワーの湯量を目一杯強くした。そうすることで自分の涙を自分自身でなんとか誤魔化せた。

 お風呂からあがったあたしは、疲れたから先に寝るねと友人たちに断ってから頭からシーツを被った。長い一日だった。



 次の日も快晴だった。高速フェリーに乗るため早起きし、例によって「M」の字の店で朝食を採る。

 あたしはいつもより陽気に振る舞ったけど、友だちはあたしに気を使ったのか中々のって来なかった。

「あたしはもう大丈夫やから心配せんでいいよ」

 あたしは友人たちに言った。

「ナッちゃん、あんた自分の顔見たん?」

 トモちゃんが痛々しそうに、あたしの顔を覗き込んできた。

「うん」

「泣きはらして目が腫れあがってるやんか。全然大丈夫そうに見えへんで」

「うん、でも一晩泣いたらスッキリした」

「このままで、ホントにええんやね」

「うん、お互いのためにこの方がええねん」

「ナッちゃんがホントにそれでいいんやったらいいけど」

「うん、OK!折角の旅行なのにウジウジしてたら勿体ないやんな」

 あたしは明るく答えた。

 あたしの陽気さと裏腹に、友だち3人は曇った顔を見合わせた。

 ありがとう、それと心配掛けてゴメンなさい。


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