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私の夏
【青春 恋愛小説】

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ビックリ自己紹介-1

「ナッちゃん、もう部屋戻ろうやあ、こんなとこにず〜っと居ったら干からびてしまうよ」 

 あたしが飛び出した後、ミヤちんは慌てて追いかけてきて、ず〜っと『干からびる』と繰り返していた。

 トモちゃんとユーコも少し遅れて迎えにきた。そしてあたしが落ち着くのを待ってから声を掛けてきた。

「ナッちゃん、茶化してごめん。あの人らも悪いことしたって謝ってたよ。部屋に戻ってもナッちゃんが気を悪くせんように普通にしとくって言ってたよ」

「そうそう、あの4人って見かけによらず話したらまともやったよ。今、戻ってきた女の子たちとトランプやるから、その間に何事も無かったように戻っといてって」

 どうやらユーコとトモちゃんが遅れて来たのは、4人としばらくそんな話をしたからのようだった。

「みんなで寄ってたかって変な事ばかりいって…」

 あたしはイジけたように言った。

「ごめんごめん。ナッちゃんの浮いた話やからついつい嬉しなってしもてん」とトモちゃん。

「そうそう滅多にないことやから、こっちもドキドキなんや」とユーコ。

「あんたらなんか嬉しそうなやあ、あたしが1人でむくれてるなんてバカみたいやんか」

「そうそう、ナッちゃんは悪く無いからむくれること無いよ」とミヤちん。

 本当にそうだ、何も悪いことしてないのに気にしたら損だ。

「わかったわかったよ。せっかく初めての旅行なのにむくれてたら台無しやもんな」

「そうそう、せっかくの旅行やもん。楽しまなくっちゃ」

 3人は顔を見合わせ安堵の笑顔を浮かべた。



 部屋に戻ると、4人は女の子達と楽しそうにトランプをしていた。彼らは部屋に入ったあたし達をチラッと見たが約束どおり何も言わなかった。ふ〜、気を使うよね〜。

 初めの内は居心地の悪さを感じていたけど、極力彼らを見ないようにしているとその内に余り気にならなくなってきたみたい。でも時折背中に視線を感じるのよね〜。チクチク…

 しばらく4人でおしゃべりをしたり横になったりしていると、いつしか昼食の時間になっていた。

 他のグループの同室者たちがこぞって食事を採りに部屋から出て行ったけど、あたし達4人は部屋に残った。ミヤちんを別にしてあたし達の船酔いの症状は、何かを食べるまでには改善されてなかったからだ。

「ミヤちんも気にしなくていいから食べといでよ」

「イヤイヤ、ここはやっぱりさっきの事が気になるやないの。ナッちゃんももう大丈夫なようやし…」

 トモちゃんの気遣いに対して、ミヤちんは好奇心が抑えられないみたいだ。このミヤちんのおばさん化現象は、高校生の頃からには顕在化されていたのよね。

「気になるほどのことやないよ、チョット予想外のことが続いてビックリしただけなんやから」

「ふ〜ん、そうなん」

 言いながらユーコの目は笑っていた。

「さっきあの人らとちょっとしゃべったけど、あの4人はそれほどすれてなさそうやね」

 ユーコはあたし達の中で一番人を見る目があるのは確かだけど…

「なんでそう思うん?」

 あたしは気になった。

「ナッちゃんに悪いことしたって直ぐに謝ってたし、あのサングラスの人もチョット落ち込んでたみたいやで」

 えっ?落ち込んでた?意外だ…

「どんな風に」

「どんな風にって言われてもなあ。周りの人らが『土下座して謝ってもう一回誘え』って言うててんけど、『嫌われたから無理や』って凄いしょんぼりしてやったよ」

「そんなに…」

 あのサングラス男から想像でき難いけど。

「あんた、あの人のことホンマに嫌ってんの?」

 ユーコが改めて聞いてきた。

「嫌ってるも何も、あたしはあの人に対して全く何も思ってないしなあ」

「じゃあ、もう1回誘われたら行ってあげたら」

「え―――!なんでなんよ?」

「なんかあの落ち込みようは可哀想やし、それに何とも思ってなかったら、一緒に星見るくらいかめへんやんか」

 ユーコは基本的に男を立てる子やったなあ。

「ホンマホンマ」

 ミヤちんも嬉しそうに相槌を打つ。

「あんたらあたしのことで、ちょっと楽しんでない?」

「解る?」

「いい加減にしいや!」

「でも、こんな機会滅多に無いやん。せっかくの旅行やのに思い出一杯つくらな勿体ないで」

 ユーコの意見はもっと貪欲に成れということか。

「ホンマや、船の上で男の人と夜空を見るなんて、考えただけでステキやんか」

 ミヤちんは面白がってるだけと見た。

「まあ、ナッちゃんもたまにはそんな経験した方がええかもよ」

 トモちゃんも二人に賛成意見だ。

「そうかなあ」

「そうそう、行っちゃえ行っちゃえ」

「お前ら、いい加減にせえよ!」






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