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富子幻舞
【歴史物 官能小説】

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富子幻舞-15

「今夜は御台所様に献上したい物がありましたので、まかりこしました。

どうぞ、お納めいただきたく・・・・・」



「献上したい物?」





勝元は木箱を結んであった紐を解き、両手でゆっくりと蓋を上げた。






「それは・・・・あの時の?」



箱の中身について、富子自身には身に覚えがあった。

それは北山で勝元が演舞していた時につけていた能面と同じ物。

あの時、富子の心を引き付けた“老人”の迫力ある風貌が、
当の演者の目の前に出現すれ形となった。








「・・・御台所様は私のつたない能をお気に召したご様子だったので、

是非にと思い進呈させていただきたく存じます」



「・・・有難い申し出ではありますが、そちらの能面は右京大夫殿愛着のものと推察させてもらいました。
そのような物を私ごときの者には勿体ない・・・・」


「・・・どうぞ、ご謙遜なさらないでいただきたい。
御台所様はご自分が思っていらっしゃる以上にお美しい。

この能面も、我が愛用の品とはいえ、御台所様を主として迎えられることに喜びを覚えておりましょう。

どうぞ、我が品お受け取りくださいますよう・・・」


そう言いながら、
畳の上に両手をつき頭を下げる勝元。

富子としても自分のことをこれほど称えてくれる勝元の進呈品を受け取らないわけにはいかなかった。


もともと勝元には、夫以上に意識し好感を抱いていたのだから―――――









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