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富子幻舞
【歴史物 官能小説】

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富子幻舞-14

「―――このような夜分、しかもお里に帰られておられる御台所様に対し、押し掛けるようにしてお目通りを願う無礼、何卒お許しいただきたくと思います」



「いえ・・・・・」




親兄弟や夫以外の男性と、このように二人きりで対座したことのない富子の返答は、
自然とぎこちないものになっていた。

知らず知らずのうちに、 心臓の鼓動が高くなったような気がしていた。









―――日野家本邸



―――離れ・謁見の間









富子自身、強い印象を受けた勝元と2人きりになれることに一抹の嬉しさを感じる反面、

突然の深夜の訪問に対して一抹以上の疑念も覚えていた。


勝元自身の訪問を受けた時富子には拒絶という選択肢をとることも可能だったが、
相手の思惑を図りかねかつ一抹の嬉しさもあって、

屋敷の人間にも極力知られないようにして会うことにしたのである。



平静を装いつつも、若さの為に緊張気味の表情を見せる富子に比し、

勝元の方はまだ若さを残しながらも管領の座にあるという貫禄と余裕を全身からにじみ出させている。

富子を見つめる瞳にも一切の緊張の色を映し出すことなく、本心をさらけ出すような愚は犯してはいない。





「・・・で、こんな夜分しかも忍びでの来訪。ご用件を伺いましょう」



2人きりでの微妙な沈黙に耐えられず先に口を開いたのは富子の方だった。


富子の問いかけに、
勝元は口許の微笑みを絶やすことなく、
傍らに置いてあった木箱を畳の上に滑らせるようにして自らの前に差し出した。
箱は年代を感じさせるもので蓋が閉じられており、朱色の紐によって結ばれている。






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