投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

カレーを食べに
【コメディ その他小説】

カレーを食べにの最初へ カレーを食べに 2 カレーを食べに 4 カレーを食べにの最後へ

カレーを食べに-3

「フルでお願いします!!」

 必要以上に大きな声を出してしまった。いけない、興奮が声にまで出てしまう。高まる期待に心臓の鼓動が速まり、うっすらと手のひらに汗まで滲んできた。空腹は限界を迎えようとしている。もう待てない。はやく、はやくわたしのところにナンを。

 そのとき。カレーとナンに脳内をすっかり侵食された彼女の隣に、若いサラリーマン風の男性ふたり組が座った。

 そのうちのひとりがいかにも頭の悪そうな口調で言う。

「あ、僕、ここ先週も来たんスよ。ここのナンね、フルはやめといたほうがいいッスよ。もうね、ナンの大きさヤバイから。ギターくらいあるんスよ。楽器、楽器」

そして下品な声でぎゃははは、と笑う。もうひとりはそれを受けて、ごく自然にハーフサイズを注文した。

すっ、と血の気が引く。明らかに20代中盤くらいの若い男性ふたりが敬遠したフルサイズのナンを、わたしは注文してしまったのかと。年齢は彼らよりもわたしのほうが確実に一世代上だろう。そして、そのギターナンをこいつらの隣で食べることになるのかと。

 わたしは選択を誤ったのだろうか。せめてこいつらと席が隣じゃなければいいのに。店員さん、そこは空気読んでくださいよ。どういう羞恥プレイですか。



カレーを食べにの最初へ カレーを食べに 2 カレーを食べに 4 カレーを食べにの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前