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カレーを食べに
【コメディ その他小説】

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カレーを食べに-4

そして。

 彼女の脳内でカレーとナンへの期待よりも不安の占める割合の方がダントツで大きくなってきた頃、それは運ばれてきた。

 思わず我が目を疑う。明らかに先ほどの女性のテーブルにあったナンとは別物である。
長さは60センチほどあるだろうか。厚みも2センチはある。若い男性リーマンの言ったことは正しかった。こんなときに誰か友人と一緒ならネタにして笑うこともできるだろうが、

 今日、彼女はひとりなのだ。「恥」という文字が大きく脳内スクリーンに映し出される。

 まわりの席から驚嘆と失笑が漏れ聞こえてくる。落ちつけ。だいじょうぶ、さっさと食べてしまえばフルサイズだっていつかはハーフサイズくらいに減るんだ。

 彼女は無心に食べ始めた。柔らかなナンを指でちぎって口に入れる。ふんわりとあたたかい。焼きたての香ばしさが口いっぱいに広がる。ほんの少しつけて食べたカレーも絶品。わたしの選択は間違っていなかった。再び神に感謝の祈りを捧げそうになる。

カレーが綺麗にお皿の上から消え、ギターサイズのナンも手のひらサイズくらいになったころ、隣のリーマンがまた下品な声をあげた。


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