藍雨(前編)-2
「あら、もう元気になり始めているいるわ…」
彼女は、しっとりと湿った、柔らかな乳房をぼくの背中に押しつけながら、ぼくのペニスの雁首
を指で撫であげる。
ぼくは、降り続く藍色の雨を瞳の中に吸い込むように、目を閉じた。
薄く生えあがったぼくの陰毛の毛先からは、煌めくような細かい光が放たれ、潤んだ雁首がかす
かに息づき、肉淵の翳りはしっとりと真珠色に耀いている。彼女の指が、包皮を撫でるように
這い、その鈴口をなぞると、小さな肉の裂け目が、あどけなく震える。
でも、少しずつ堅さを増していくぼくのペニスの憧れは、今もまだ燿華さんなのだ。
ベッドの中で年上の女に抱きよせられながらも、瞳を閉じたぼくは、ふたたびあの頃の燿華さん
との深い夢に耽ろうとしていた…。
…ううっ…と、後ろ手に革枷で拘束されたぼくのからだの中から搾り出される嗚咽が、仄かな灯
りの中で響いている。
無彩色のからだの渇きが、一瞬癒されたと思ったとき、ぼくは生唾を咽喉の奥深く呑み込んだ。
ぼくのからだの上で、女の人の白いからだが揺れ動いているような気がした。
いい匂いがする…。
目の前で、琥珀色の乳房が、優しげにゆらゆらと揺れている。その乳首がぼくのからだに押しつ
けられるように吸いつくと、彼女は、ぼくの薄い胸を生あたたかい舌でなぞり始めたのだ。
もしかしたら、燿華さんかもしれない…その女の人の顔は淡い霞のようなベールに覆われ、よく
わからない。
…ああっ…あっ…
乳首をなぞる彼女の舌先に火照り始めたぼくのからだが、遠いさざ波のように震え、ぼくを包み
込むミルク色の彼女の肌の体温が、どこか懐かしいものを感じさせる。
ペニスの先端からは、透明の汁が、まるでオアシスから滲み出る泉のように湧き出て、清流のよ
うな血潮がさらさらと熱を帯び始めたペニスに集まっている。
ぼくのなかに、甘酸っぱい憧れのようなほのかな疼きが、ひたひたと押し寄せてくる。
その女の人は、白い歯を甘く立て、小さな花蕾のようなぼくの乳首を唇に含み始めていた。彼女
の舌が乳首を撫でると、檸檬汁のような香ばしい匂いがぼくの胸いっぱいに広がる。