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偽りのデッサン
【熟女/人妻 官能小説】

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第11話 モーテル通り-1

駅を出てからしばらくすると、二人を乗せた車は、あの日と同じく海岸線を走っていた。
ただ違うのは、行く先が逆方向で、睦美の案内通りに走らせていた。
目的地は、ネットで検索済みで土地感が無くとも大体把握できていた。
それでも睦美は、目的地を告げる事は無かった。
慶は、行き先を知らぬままハンドルを握っていたのだ。
その車内の二人は、すれ違う車から見れば、睦美の若々しい装いも合い重なり、今は恋人同士にしか見えなかった。
逆に慶は、睦美に気を使って、あの日よりも少し落ち着いた服装だった。
髪型とメガネは変わらないが、上は赤と白のチェック柄の長袖Yシャツに黒のノースリーブダウンジャケットを羽織り、下はベージュのチノパンに足元は黒のワークブーツを履いていた。
カジュアルだが、どこか落ち着いていて、どの年代にも好まれるような装いだった。
逆に睦美の方が、派手な感じで浮いてるようにも見えた。
それでも慶は、若々しく着こなしてる睦美に、まるで同年代の恋人でも出来た喜びを感じていた。

「慶君が描いてくれた私の絵・・・本当に上手よね・・・よく見ないで、あんなに上手く描けるわよね・・・・・。私の付けてたスカーフの柄だって、正確だったし・・・何か、本当に目の前でデッサンされてるみたいで驚いたわ・・・・・。」

慶も、次第に慣れてきたのだが、年下の為かどうしても遠慮がちで、いつも会話を作るのは睦美だった。

「いやっ・・・僕もつい睦美さんの事を思い返してしまって描いたんです・・・何だろう・・・僕もよく分らないんですけど・・・・・。ただ・・・あんな『変な絵』を急に見せられたから・・・睦美さんが気を悪くしたかと思ってたんで・・・何かそれを聞いてホッとしました・・・・・。」

「へ〜そうなんだ・・・私の事を思い出してたんだ・・・何でだかは分からないけど、ちょっと照るわね・・・・・。でも・・・しょせん慶君に取っては、私はお母さんなのよね・・・・・。結局、私と会って・・・お母さんを思い出しただけなのかな〜・・・それでお母さんのつもりで描いたとか?・・・・・。」

「べ・・・別にそんなつもりは・・・ただ、・・・何か睦美さんの事が、少し気になったと言うか・・・綺麗な人だから描いてみようかと思ったと言うか・・・・・(後半は小声になり聞き取りづらくなる)」

「あ〜!?(突然)・・・『変な絵』って・・・やっぱモデルが悪いから!?・・・・・・。もうっ!・・・おばさんだからって・・・本当に失礼しちゃうわね!・・・・・。」

睦美は、慶の言葉を遮るように思い返したら急に怒り出し、窓際にソッポを向いた。
実は、慶の睦美に対する誉め言葉にも照れがあったからだ。

「ち・・・違うんです!・・・。な・・・何だろう・・・僕は口下手だから、どう言って良いか・・・その〜・・・・・。」

慶にしては、淫らな気持ちで描いた官能的な絵に対して、『変な絵』と言う事だった。
睦美もニュアンス的に気づいていたが、あえて怒って慶を困らせた。
しかし、その窓際を見る睦美の口元は、笑みをこぼしていた。

「ふふ・・・嘘よ・・・本当に慶君は冗談が通じないんだから〜・・・・・。でもね・・・今日は『変な絵』じゃなく・・・もっと素敵な絵を描いてね・・・・・。」

「え・・・ええ・・・もちろんですよ睦美さん・・・・・。」

睦美は、慶を困らせる事で、可愛らしい側面を見出していた。
今、慶と一緒に居る時間が楽しく思えて、つい無邪気に接してしまうのだった。
普段は、友人の加奈子に対しても、どこか気を使う反面もあり、少しストレスを感じるところもあった。


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