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『癒しの館』〜変態マッサージ店〜
【レイプ 官能小説】

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『癒しの館』〜変態マッサージ店〜-3

 やれやれ、と思いながらジャケットのボタンを留め直す。雑巾で汚れた床を拭いていると、他の従業員が心配そうにのぞきに来た。

「店長、大丈夫ですか?田中さん、ほんと滅茶苦茶言うから・・・」

「大丈夫よ、ありがとう。それより、バックヤードの新商品をどんどん売り場に出していって。返品作業も今日中に終わらせたいの。お願いできる?」

 わかりました、と良い子のお返事。できればもうちょっと早めに助けに来てほしかったわ、という言葉をまた飲み込む。ひとつ何かを堪えるたびに、胃のあたりに鈍痛がする。頭や肩の重みが数グラムずつ増していく。

 給料日後すぐの週末ということもあってか、閉店間際まで客足は途絶えなかった。接客に追われながらも、どうにか閉店時間までに雑務を終え、他の従業員が帰っていくのを笑顔で見送る。軽い達成感、それに見合わない疲労感。

 照明を落とし、すべての電源が切れているのをチェックした後、自動ドアに鍵をかける。ガチャリ、と鍵のかかる音を聞くと、ああ今日も1日が終わったと思う。誰も待つ人のいない三十路女の独り暮らし。このあとの夕食を考えるのも面倒くさい。とにかく体が重く、だるい。

従業員用の入口から帰ろうとしたときにバッグの中でケータイが鳴り出した。着信表示が示す名前は同じ系列の店長仲間、川崎美香。同い年ということもあって、たまには飲みに行ったりするような仲だ。

「もしもし?」

 歩きながら電話に出た。繁華街のど真ん中に店舗があるため、建物の外に一歩出るとそこは日曜の夜を楽しむ人々のざわめきに包まれている。きゃあきゃあと笑い声をあげながら家路を急ぐ家族連れ、これ以上はどう頑張ってもくっつけないというくらい密着して歩く恋人同士。いいなあ、こんな仕事をしていると日曜日が休みなんてことは絶対にない。

『・・・由梨?聞いてる?』

「あっ、ごめん、ちょっと考え事してた。なんだっけ」

『もう!働き過ぎで疲れてるんだよ・・・まあお互い様だけどね。明日休みだって言ってたでしょ?わたしも休みなの。今から晩ご飯一緒に食べない?』

 美香に言われて気がついた。そうか、明日は公休を取っていたんだった。人の流れを避けて道の端に寄る。すぐ脇の柱に取り付けられた古い時計の時刻は午後9時を過ぎたところ。頭を左右に振る。ぱきぱきと音がする。

「うーん、ちょっと疲れてるの。新商品の搬入や慣れないバイトの研修とかいろいろあったでしょ?もう体がダルくて仕方ないのよ」

『なんなの、その死にそうな声は!それならちょうどいいよ、ちょっと癒し系のスポット見つけたんだ。一緒に行こうよ』

「癒し系?アロマとかマッサージ?あれって高いばっかりで効果ないから嫌だな」

『もう、ケチなんだから。そういうんじゃないよ。とにかく会ってから話すから、ちょっと出てきて』

 美香は待ち合わせ場所を言った後、こっちの返事も聞かずに電話を切ってしまった。美香らしいな、と笑いがこみ上げてくる。張りつめていた気持ちが少し緩む。

同期で入社したけれど、わたしと美香は正反対のタイプだった。わたしがある程度我慢したり堪えたりしている間に、美香は誰かれかまわず噛みついて、上司からも先輩からも疎ましがられていた。その代わりに裏表が無いさっぱりとした性格で、言うだけのことを言った後にはきっちりと売り上げを伸ばしてくるものだから、いつしか皆の美香への評価は自然に高くなっていた。

 あんなふうに生きられたらストレスも軽減するのだろうか。ふう、とため息をついて軽く背伸びをし、重い体を引き摺りながら待ち合わせ場所へと向かった。


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