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凶眼
【制服 官能小説】

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〜第1章〜 水曜日 レアン-1

 見慣れた景色が窓の外を走り去るのを、何気なく眺める。朝の通学電車は、いつもならうんざりする一日の幕開けである。
 結局、昨日のプリティエンジェルの放映には間に合わず、おかげで土曜日の再放送を待たねばならなくなった。何とも、預けを食らった犬のようで、惨めな気分である。
 まぁ、今夜は妖怪ハンター魔鈴の放映日だ。プリエンと違って、こちらは夜11時からの青年向け作品。さすがに見逃すことはあるまい。
 それよりー
 僕は制服の内ポケットから、惨めな犬の気分と引き換えに手に入れた、二つの品物を取り出した。
 一つは赤い宝石の付いた首飾り。この宝石がただのガラス玉なのか値打ちものかはわからないが、人間の瞳を模したデザインで「凶眼」と言う名があるらしい。見つめると本当に吸い込まれそうな気分になる。もっとも僕に似合いそうなアクセサリーではない。
 もうひとつは特別な時にだけ使えるという携帯電話。どこのメーカーのものとも知れず、試しに自分にかけてみたが、発信音すら鳴らなかった。
 昨夜、占い師のお姉さんに言われたことは、到底信じられるものではなかった。
別にお金を請求されたわけではないが、年上のお姉さんにからかわれただけで、渡された物もただのガラクタではないだろうか。そう考えるほうが、自然のことと思えてくる。
 だが心の中で、忘れがたい美しい声が反芻される。
 「これを使えば、女の子を貴方の好きに操れるのよ‥」
 発車ベルが僕を現実に引き戻す。いつの間にか学園のある駅に到着しており、危うく降りそこないそうになった。

 ホームを出て、他の学生達と学園に向かうと、やはり常識のほうが理性に働きかけてくる。
 男子高校生の欲望を弄ぶような話だが、そんなことがあるはずない。冗談を真に受けて大恥かくのは御免こうむる。アニメのことでも考えて気持ちを切り替えよう、と僕らしい結論に至る。
 今夜の妖怪ハンター魔鈴は、露出の激しいチャイナ衣装の魔鈴ちゃんが、妖怪を封印していく、青年誌のアニメ化作品である。プリエンの女の子は可愛いが、魔鈴ちゃんのセクシーな姿もたまらない。
 ちなみにプリエンの主人公は小学生だが、僕はロリコンではないし、2次元に神などいない。ちゃんと人間の女の子が好きだ。アニメはアニメで純粋な作品として楽しんでいるつもりだ。
 だから一部のオタクの間で流行ってる、プリエンのアダルトバージョン「セクシーエンジェル」とか、ああいう邪道な作品にはあまり興味がない。とは言え、アニメが好き、と言う僕の趣味が、世間的に好まれないことは理解している。
 「ちょっと、そこのオタク!」
 突然、悪意ある呼び方とともに背中を叩かれ、驚いて振り返る。
 見れば暴力の主は、まるで朝から嫌なものでも見たという表情の、天敵レアン・リーエンだった。
 香港人とのハーフである彼女は、東洋人特有の愛らしい顔立ちをしているが、僕に笑顔が向けられたことは一度もない。


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