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〈不治の病〉
【鬼畜 官能小説】

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〈不治の病・其の一〉-6

『……もっとハキハキと言わないと。根暗な看護師は嫌われるからね』


悪びれもせず、婦長は冷たい口調で話しかけてきた。
どうにも亜矢は、この婦長が好きになれなかった。
顔を見ても感情が読み取れず、さっきの態度もデリカシーの欠片も感じられない。

前の病院に、こんな人は居なかった。
皆、自分の仕事を誇りに思い、同じ職業の仲間を思いやれる人達ばかりだった。
憂鬱な気持ちが生まれ始めている中で、気が付けばナースステーションに戻ってきていた。
と、まだ新人と思われる若いナースが、一人ポツンと椅子に座り、机の一点を見つめたままで涙を零していた。


『菅原さん、坂口さんに仕事与えて。雑務でいいから』


婦長は、その泣いているナースを見るや、亜矢を遠ざけるように他のナースを呼び付けた。
そして若いナースの肩を抱き、奥の部屋へと二人で入って行った。


(何だろ?仕事でヘマでもしたのかな?新人みたいだったし)


亜矢は特別気にもとめず、菅原と呼ばれる見るからにオバサンな先輩の指示を仰ぎ、この病院で初めての職務についた。




――――――――――――



(ふぅ…疲れるな………)


先輩達の指導のもとで、亜矢はナースとしての仕事を熟していった。
カルテにしても、医療機器にしても、何処に何があるのかまだ分からない状態での仕事は、必要以上に疲れを感じていた。
素っ気ない先輩達の言葉のままに走り、培ってきた医療技術を応用して患者達と接していく。
整形外科の仕事は、患者の容態が急変する事も殆どないので、他の医療に比べれば気持ちに余裕を持ちやすい。
少しずつではあるが、半日程で亜矢は仕事を熟せるようになっていた。


(婦長さん、あれから見えないな……)


あの若いナースと消えてから、婦長の姿は何処にも無かった。
重大なミスを犯したなら、それは直ぐに全員に通達され、再発防止に務めるのが常識だ。
そんな通達もなく、あの若いナースは消えた……この病院に来てから生まれた不安感が、いつまでも亜矢の心から消えない……そんな亜矢に構わず時間は進み、夕暮れを迎え、そして夜になった。



『坂口さん、22時にB棟の見回りに行って。私達はA棟をやるから』


婦長が不在のまま、時刻は消灯時間の21時を迎えた。亜矢は初めての勤務だというのに、夜間巡回の仕事を押し付けられた。
夜間巡回は22時と0時と2時。
完全に就業規則に違反な労働時間だが、先輩達の命令に背けるはずもなく、B棟の見回りを任された形となった。





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