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〈不治の病〉
【鬼畜 官能小説】

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〈不治の病・其の一〉-5

(…あ、結構空きベッドあるんだ…だから静かなんだね……)


部屋の中には患者が居たが、普通に寝そべって週刊誌を読んでいる。
四人部屋に、たった一人だけ。
殆ど個室と変わらない“待遇”だ。
とても何処かの関節を病んでいる患者には見えないし、病室の周りにはナースの姿もない。
A棟では忙しく歩き回っているのに、B棟では一人もいない。
両極端な病棟に、少しの違和感を感じていた。


『お?新しい看護婦さんかい?』


通り過ぎた515B号室から、一人の患者が顔を覗かせて、後ろから声をかけてきた。
40代くらいの太った男が、伸びた髪をボリボリと掻きながら、亜矢を見つめてきた。


「あ、今日から配属になった坂口です。宜しくお願いします」


亜矢は軽く会釈をし、少し微笑んでから婦長に追いつくように駆けた。
男の顔がニヤついたのを横切る視界に捉えたが、気付かないふりをして歩みを進めた。


「あの人、何処が悪いんですか?健康そうですけど……」

『……頭が悪いみたいよ』


本当とも冗談ともとれる言葉に愛想笑いをしながら、遂に一番奥の部屋まで来た。


『皆さん、新しい看護師さんだよ』


一番奥の部屋は、六人部屋がキチンと埋まっていた。
並べられたベッドに、若い男から中年の男まで寝転がり、亜矢を見つめていた。


「今日から配属になった坂口です。宜しくお願いします」


先程と変わらぬ挨拶をして、軽く会釈をした。
と、上げた亜矢の顔を、患者達はジロジロと眺め、口元に笑みを湛えた。

やや切れ長でありながら、パッチリと開かれた瞳。
鼻筋はスッキリと通り、小さめな唇はポッテリとして潤んでいる。
栗毛色のセミロングの頭髪をキリリと後ろに纏め、純白のナース服を着た亜矢は、そのスレンダーな身体を更に細く、魅力的に魅せていた。
スラリと長い肢体はグラビアアイドルのようであり、膝の覗く裾から見える脚は、例え白いストッキングに隠れていても、充分に美味そうに見える。

絡み付くような患者達の視線に少し不安になり始めた亜矢に、一人の患者が声をかけた。


『名前はなんて言うんだ?』


亜矢は答えようとしたが、何故か言葉が出てこない……直感的に警戒心が働いたのだろう。


『亜矢さんて言うのよ。26才で、前の病院のアイドルだったんだから』

「!!!」


無神経な紹介を済ませると、婦長は据わった眼差しを亜矢に向け、またも口元だけで笑った。
言いようのない不安感に固まる亜矢を尻目に、婦長は部屋を出ていってしまった……亜矢も、我に返ったように駆けだし、婦長の後ろについた。



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