投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

THANK YOU!!の最初へ THANK YOU!! 8 THANK YOU!! 10 THANK YOU!!の最後へ

THANK YOU!!-5


なんとか昇降口の混雑の時間が過ぎ、教室の手前で千晴と別れた瑞稀は、教室に入った。
そして、自分の席に着く。
いつもなら空を見上げるのだが、今日は別。
何といっても、文庫本があるのだ。
瑞稀はランドセルを横にかけるとすぐさま、本の世界に夢中になる。
結局、拓斗に肘をつつかれるまで、そのままだった。
拓斗は「自分の世界に入ってたから声かけなかった」と言って笑っていた。
それを聞いた瑞稀は、またも見られていたことに恥ずかしくなった。
だが、昇降口に入る前に見た拓斗と菜美の時に感じたモヤモヤも少し残っていた。

朝自習の時間。
今日は、来月行われる運動会についての決め事。
しかし、高学年は出る種目が決まっている。
5、6年合同の組体操と鼓笛パレードだ。
あとは、裏方の仕事。

組体操は体育の時間にできるとして、鼓笛隊も、5年生はリコーダーなので、決める必要が特に無い。
なので、裏方の仕事の事を決めたいということだ。

「じゃあ、黒板に書いていくから、決めといてねー」

そう言って、担任は次々に黒板に仕事の係を書いていく。
それを見た生徒たちはうんざりした。

「先生ー、なんでそんなに多いのー」
「お、得点板係っていいな」
「お前・・変わってるな」

そんなクラスメイトの騒ぎに思わず苦笑してしまう瑞稀。
拓斗も、それに釣られる。

「お前は、何やるんだ?」

担任が、黒板に全て書き終わった事を確認すると、拓斗は瑞稀に聞く。

「うーん・・あ、審判やってみたい」
「審判!?お前・・変わってるな。」
「え!何で!?ひどいよ!」

瑞稀は、冗談だと分かっていながらも、困らせたくてぷくっと膨れてみせる。
それを見た拓斗は笑いながらも、謝った。

「じゃあ、許そう。鈴乃は?」
「俺?・・悩んでる。でも」
「でも?」
「・・お前と一緒に審判やってみたい」
「・・・!」

拓斗から不意に出た言葉。
その言葉に驚き、声が出なかった。
だが、勿論嫌とは感じなかった。むしろ嬉しかった。

「・・じゃ、じゃあ、立候補してみる?ちょうど決めてるみたいだし」

あくまでも冷静を装い、前を指差す。
そんな瑞稀に気付かないのか、拓斗も、「あぁ」と言って、前に向き直った。

すると、ちょうど先生が審判の話をした。

「審判は二人枠で、タイムの計測とか違反が無いか確認する係。やってくれる人〜」
「先生〜。そんな面倒なのやる人いないだろー」

そう、クラスメイトが漏らしたとき、瑞稀と拓斗は頷きあって同じタイミングで、
手を挙げた。

「「はい」」

瑞稀と拓斗が同時に手を挙げたので、担任を含めその場に居た全員が固まった。
皆、あっけに取られている。

「え、え、何で?」
「さあ・・」

当の本人たちは、全く気づいていないが。
しばらく固まっていた皆だが、状況に理解できると、全員で冷かし始めた。

「おいおい、まさか係までも一緒!?」
「どんだけラブラブなんだよ!」
「うわー。やばいよコレ」
「カップルいいなー」

瑞稀は冷やかしが止まらなくなったクラスメイトに、何か言おうとして言えなかった。
一緒に、審判の係をやろうとしているのは事実だ。
拓斗も、そのことを分かっているのか、何も言わなかった。
担任は黒板の審判のところに、瑞稀と拓斗の名前を書いた。

こうして、瑞稀と拓斗は同じ係についた。
その後、瑞稀と拓斗に促されたかのように、次々に係が決まった。



THANK YOU!!の最初へ THANK YOU!! 8 THANK YOU!! 10 THANK YOU!!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前