【ロケットパンチを君の胸に♪】〔第三部・最終編〕-6
今から数十分前に、話しはもどる。
『フェアリー☆テールの凶悪リス怪獣がテーマ・パークに現れた!【ヴルキューレ・α】発進!!』
暗闇長官の出撃指令に、涼華は一言…。
「いやです」
と、言い放った。
『このワガママ女が!』
さすがに、暗闇長官もその言葉には頭を抱えた。その時…パイロットの翔が一歩進み出た。
『涼華お姉ちゃん…話しがあるんだけど、顔の近くにボクを、運んでくれないかな』
ブリッジの上で、翔がメガホンで言った。
「なあに?翔くん」
涼華は、カタパルトに固定されていても、少しだけ動かせる手の平に翔を乗せて…自分の顔の近くに運んだ。
「もう少し…口の近くに…あれっ?涼華お姉ちゃん、歯に焼きソバの青ノリが付着しているよ?」
「えっ!!」
涼華が口を開いた瞬間…翔は涼華の口の中に、飛び込んだ。
「今だ!口内イ───ン!!」
「ごほっ!けほっ?」
涼華自身も知らなかったが、ヴルキューレ・αのコックピットは、涼華の口が搭乗口となっていて…直通でつながっていた。
「やったぁ!涼華お姉ちゃんに搭乗したぞ!」
コックピットに座った翔が、興奮した口調で言った。
「い、いやぁ!あたし体の中で、何しているの翔くん!気持ち悪い!」
翔は、涼華の感情を無視して、自動車のハンドルみたいなロボットの操縦部分を握り締め…足元のアクセルをふかす。
「ヴルキューレ・α!発進!」
格納庫の上部が開き…涼華は、ブースターで空中に射出された。
「いやぁぁぁぁぁ!!」
悲鳴をあげて飛んでいく涼華の、すぐ後ろから【ヨルムンガルド・β】と【フォンリル・γ】も飛んでいく。
やがて、テーマ・パークのような建造物が海岸に見え…涼華は、その近くに、着陸…と、いうより落下に近い形で落ちた…落下の衝撃で、地面が揺れる。
「あ〜ん、お尻…打ったぁ」
尻もちをつく形で、泣き出しそうな涼華の耳に…驚いた声で名前を呼ぶ、人物の声が届いた。
「お、お姉ちゃん!?」
「えっ!?」
聞き覚えのある声に、地面に目を向ける涼華…そこに、妹…鈴美の姿があった。
「す、鈴美?どうしたの…その格好?なんで、こんなところにいるの?」
「お姉ちゃんこそ、大きくなっちゃって…」
「り、涼華!」
鈴美の近くにいた、フェアリー☆テールの戦闘要員が覆面をずり上げる。その下から現れる龍彦の顔。
「た、龍彦さん?」
『お兄ちゃん?』
涼華の体の中から、翔の声が響く。
涼華…鈴美…龍彦…翔、感動の再会であった。
「お姉ちゃん!!」
駆け寄ろうとする鈴美の耳に、燃え尽きたフンコロガシの球体の残骸から声が響いた。
「待て!!おまえたちの相手は、このオレだ!」
ガチャポンから出てきたような…少し焦げた透明カプセルの中から、Tシャツ姿で頭にバンダナを被った男が、飛び出してきた。
「粘着!!」
イナズマが、男の体に走り…男は変身した。左半身だけの装甲格闘スーツの戦士に…。
「武装戦士・ゴクガミー!…って、わあっ!また、物質電送失敗している!」
はっきり言って…左半身だけ変身したヒーローは格好が悪い。フェアリー☆テールの面々は必死に、笑いをこらえた。
「笑ったな…おまえらぁ!ゆるさーん!」
極神 狂介は…キレた。