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Odeurs de la pêche <桃の匂い>
【同性愛♀ 官能小説】

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第4章 展開-15

 絵美が言うには、フランス人のマヌカンの一人で、ジネット・ミショーという女性が、<あのショーの後ろの席にいたとても美しい女性は誰だ、是非もう一度会ってみたい……>と言ったので、自分の友人の友人だと言いましたら、是非もう一度会ってみたいから連絡をとって欲しい、と言われらしいのです。
「いかがでしょう。暫くはハイアットホテルに滞在しているから、都合の良いときに来て欲しいとのことですが、連絡していただけますか?」
 律子は一瞬暗い目をして私を睨みました。絵美は続けて、
「多分、翔子さんを今度パリで行われるショーのモデルに推薦したいような口振りでしたけど……」
 と言ったので、<そういうことだったのかと>律子は純真にもホッとしたようですが、私は、そのジネットが逢いたいという目的はほぼ分かっておりました。
 私は律子の手前、<モデルなんてする気はないから断ってくるけど、逢って直接断るのが礼儀だから、とにかく一度逢ってくる……>とは言ったものの、私はジネットという女性にもう一度逢ってみたかったのです。
 律子が出かけるとすぐホテルに連絡をとり、午後の約束をして出かけました。

 ロビーに現れたジネットは満面の笑みを浮かべて私に頬ずりの挨拶をし、手を取って部屋へ誘いました。
 部屋に入るや否や、ジネットは私を抱きしめ、
「逢いたかった。探したのよ翔子。日本にこんな素敵な女性が居るなんて。ステージからはあなたしか目に入らなかった。そして、隣にいた女性はステディでしょ。翔子、あなたがビアンだと直ぐに分かった。私はあなたが欲しかったのです。あなたが欲しい……」と早口でまくし立てました。
 なんというストレートさでしょう。モデルの世界のことは知りませんが、多分、舞台裏では裸で走り回る美しい女性の集団です。性に対してはかなりオープンなのだろう、と想像はつきます。勿論私も、絵美の話を聞いたときから、彼女とはこうなることを知って来たわけですから拒否する気持ちはありませんでしたが、いかにフランス人とはいえ、ここまでの性急な告白には驚かされました。
しばらく手を取り合って話をするうちに、私をとらえて放さないジネットの目は潤み、息が上がってくるのが分かりました。<余程Convoitise(好色)な性癖らしい>と、少し興ざめした思いでジネットを見ておりました。身体から立ちのぼってくる強いシャネルに少し辟易しながら。
「なんて美しい人、早くあなたの全てが欲しい。日本へ来るのを躊躇っていた私だけど、ホント来て良かった。あなたのような日本人と知り合えるなんて、うれしい、うれしい……」
 ジネットは面影こそミニョンを彷彿とさせましたが、ステージの照明のもとではあれほど美しく感じられたのに、近くで見るジネットは、化粧のせいか肌は荒れて不健康そうで、<r >の発音もできず、会話にもミニョンのような知性は感じられませんでした。
「ご用件がそれなら、帰らせて頂きますわ」と言うと、彼女は、
「あなたも私の目を逸らさなかった。あなたも私を求めて来たに違いない。私はあなたを帰さない!」
 言うが早いか私をベッドにねじ伏せ、乱暴に私の全てをはぎ取ると、飢えた雌豹のように跨ぐと、よく聞き取れないフランス語を囁きながら私の体中にキスをし、性急に私のソコに顔を埋めたのです。
 私の目の前に突き出された彼女のソレは、髪と同じブロンドで被われ、見た目には美しいピンク色の襞や、既に張りつめて飛び出している真珠が濡れて光っておりました。<早くして>と、くぐもった声で叫んで近付けたジネットのソレは、山羊のチーズのような強烈な匂いを放っていました。私はその匂いに耐えきれず、私をいたぶっている彼女に叫びました。
「Arrête-le!(止めて!)Veuillez arrêter l'acte que tu fais maintenant(今すぐ止めて)Je ne suis pas une femme que vous pensez!watasih !(私はあなたが考えているような女じゃないわ)」
 彼女は舌打ちをすると私から離れ、
「あなたは美しいけどただのお人形だったのね。何も出てこないじゃないの。私も人形なんか抱きたくない。思った通り日本の女というのは××××××……」
 理解できないフランス語で悪態を付きました。つくづくミニョンの幻影を追っていた私の浅はかさを後悔しました。



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