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冥界の遁走曲
【ファンタジー その他小説】

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冥界の遁走曲(フーガ)〜第一章(前編)〜-6

6 「…へ?」
闘夜は目を白黒させている。
頭の中でいろいろな疑問が浮かびすぎて今まさにフリーズしている。
「…あの、大丈夫ですか?」
そんな状態を察したのか目の前にいる少女、一神 癒姫は闘夜の様子を伺う。
「うん、大丈夫。俺は大丈夫。」
闘夜は自分を納得させるように、相手を納得させるように言った。
そしてようやく闘夜の頭の中に答えがでた。
そしてその対応策を述べる。
「一神さん、はっきり言うけどお前、絶対言語障害、あるいは脳内異常をわずらってる。
すぐにこの地上の病院に行って医者に診てもらうんだ。」
なんなら俺もついていくから。と言って癒姫に手を差し伸べた。
癒姫は驚いたような顔をして、
「あ…、あの、私別に言葉を間違えてもいませんし、脳がおかしくなったわけでもありませんし、病院に行く必要もありません!!
というよりその発言は初対面に向かって失礼です!!」
癒姫が真剣に怒っているのが分かった。
それを見て闘夜は、
…話しを先に進めたほうがいいな、と判断した。
「すまない、悪かった。いきなりの事だったから俺のほうも気が動転したようだ。」
「…話を進めてもよろしいですか?」
皮肉を言うように言ってきた。
闘夜は差し障り無く進めようと思い、
「ああ、頼む。」
「では話を続けますよ?」
コホン、と癒姫が一つ咳払いをして、
「繰り返しますが私はこの世界の人間ではありません。
私がこんな事を言うのは決して言語障害でも脳内異常でもありません。
ただ、それが事実なのです。」
やはり、皮肉を含めながらも癒姫はあっさりと断言した。
闘夜は頭の中の余計な疑問を打ち払いながら、
「じゃあお前はどこの世界の人間なんだ?」
癒姫はふぅ、とため息を一つついて、
「冥界です。」
とあっさり言ってのけた。
まるでこちらの常識などを全く知らないかのような言動だ。
闘夜はまずは簡単な質問で相手が答えられそうな、なおかつ相手を怒らせないような質問をする事にした。
「じゃあ『冥界の使者』の冥界はお前が住んでいる所なんだな?」
癒姫は微笑んで、
「はい、そうです。」
と答える。
「じゃあ、地上と冥界って何が違うんだ?」
「地上と冥界の違いは、人の状態です。」
「状態?」
闘夜はまた頭がフリーズしそうになった。
いや、これまでに何度パニックに陥りそうになったか。
闘夜は相手の言葉に振り回されてなるものか、と必死だ。
「地上の人達の状態を”生きている”というなら冥界の人達は”死んでいる”状態なのです。
今のあなたのように。」
闘夜はその言葉を聞いて冥界についてほんの少しだけわかった気がした。
と同時にその確認を目の前にいる癒姫と行う事にした。
「って事は冥界ってのは俺らの言うところの”死んだ後の世界”って事か!?」
「はい、そうです。人は死ぬと必ず冥界に来ます。
中には霊として地上に残るものもいますが。」
なるほど、と闘夜は思う。
いくつかの宗教では死後の世界に関する思想があるらしいが、今、癒姫が語っているのはまさにそんな話なのだ、と思えば少しは話が分かる。
「じゃあ生きてる奴は冥界に行けないって事なんだな?」
「はい、そうですね。唯一の例外を除いては。」
闘夜は癒姫に疑問符を投げつけた。
それを癒姫が察したように話を続ける。
「何を驚いているのですか?あなたなのですよ?例外というのは。」


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