冥界の遁走曲(フーガ)〜第一章(前編)〜-15
15 闘夜と癒姫は商店街にて買った地図を見ていた。
その地図は四角い大きな島と周りに小さな四つの島がある。
そしてそれらは正方形によってレイアウトされていた。
正確に言えば、25本の縦線と26本の横線によって区分けされていた。
縦がアルファベット、横が数字になっているらしい。
冥界全土の地図だ。
「え…と、癒姫、状況解説頼めるか?」
「はい、喜んで。」
と言いつつ、目が喜んでいない。
癒姫の目はさっき泣いていたので真っ赤になっている。
その真っ赤になった目からは早く現場に行きたいという想いがひしひしと伝わってくる。
…これは驚きはなしにしてさっさと理解しないといけないな。
と闘夜は思った。
「まず、この四角い島が『冥界』の本島です。
周りにある四つの島は『死神』の者の所有物であり、死神以外は立ち入り禁止となっています。」
癒姫はてきぱきとしゃべっていく。
「今現在私達がいる商店街はJ−12地区です。
そして彼らはK-9,10,11,12と来て、最後にK-13、すなわち『ガヴァメント』の本部を目指しているはずです。」
これが最短ルートですから、と付け加える。
「私達はK-11に行った後、彼とぶつかるように数字を逆戻りに進めばいいわけです。」
「よし、分かった。状況把握完了!!」
そう言って闘夜は両手で顔をバシッと一回叩いた。
それを癒姫が不思議に見ていて、
「何をしているんですか?」
「ん?気合を入れたんだよ。」
と言って闘夜はいたずらっぽく笑ってみせた。
「とりあえず移動手段を何とかしよう。」
「『ガヴァメント』に行けば『戒』の権限でバイクを貸してもらえます。」
「…運転はできるの?」
癒姫はうつむいて、
「ごめんなさい。」
闘夜は、はぁ、とため息をついて、
「じゃあ俺がやるよ。免許証は持ってないけど趣味の範囲で乗り回した事がある。行こう!」
そう言って闘夜は手を差し出す。
が、癒姫は手を取るのをためらっている。
「どうした?」
「…どうして、あなたはそんなに私に気を使ってくれるのですか?」
「そんなの簡単だ。」
闘夜はこともなげに言う。
「悲しんでる奴の姿はあんまり見たくないんだ。」
それよりも、と闘夜が付け加える。
「行くぞ、間に合わなくなる。」
「…はい!」
癒姫は手を握って走り出す。
闘夜と共に。
真実を確かめに行く。