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「Wing」
【ファンタジー その他小説】

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「Wing」-10

視線が気になったのでバルコニーの方に避難してみたら、そこに彼女が佇んでいた。頼むって言われたしな……一応声かけておくか……
「何……してるんだ?」
「ん?ちょっと考え事」
「父親の事か……?」
「うん……」
羨ましいな……親父の事で悩めるなんて…………
「ねえ……」
「……レオンのお父さんってどんな風な人だったの?」
目を閉じれば思い出す――懐かしい日々を……最期の瞬間を…………





「留守番頼んだぞ」
「お父さん?」
「ちょっと行ってくる」
そう言って頭を撫でてくれた、あの大きな手の暖かさ。いつも憧れてた大きな背中――





城の雰囲気がいつもと違う、何か大変な事が起こっているという事だけは分かった。
「……私が戻るまでここを出るな!!いいな!?」
「お父さんは?」
「……ちょっと、行ってくる……」
そう言って頭を撫でてくれた。だけどいつもと違う―少し手が震えていた……こちらを見つめる瞳は…………





「……レオン……母さんの事、頼んだぞ……」





何処か遠くを見つめていたが、視線を下に落として、話し始めた。
「……厳しくて、優しい人だった…………」
「だった?」
「……死んだ……」
「ごめん……」
「いいんだ。気にするな……」
「……ごめん……」
「もう五年以上前の事だ……」
悲しそうに笑っている。本当に苦しそうで、見ていられなかった。
「親父が死んだ後すぐに母さんも病気で……自分独りじゃ何も出来くて……大切な人が皆死んでいって……あの時は本当に……本当に辛かった…………」
「……レオ……ン?」
今まで見たことも無いような悲しそうな、寂しそうな顔をして空を見上げている。泣いてはいないが握り締めた拳が震えている。
「……あっ……その…………」
言葉がうまく出ない。何かしてあげなきゃ。そう思った時、自然と行動できた。彼の正面に立ち、そっと抱きしめる。背が高いのでお腹の辺りまでしか届かなかったが、それでも十分だった。少し驚いてたけど、背中に手をまわして抱き返してくれた。―そのまま暫く抱き合っていると――
「……クレ、ア……」
「ん?」
「ありがとう……」
「どういたしまして」
もう少しこのままでいたいなとか考えてた時、突然背後から邪魔が入った。
「クレア様。王がお呼びです」
慌てて体を離す。その様子が可笑しかったのか、呼びに来た女は口に手を当て小さい声でくすくすと笑った。
「それとレオン様はこちらへ」





王室へと足を向けながら考える。
今考えると結構恥ずかしい事、したのよね。けど彼が元気になったし、ちょっと嬉しかったし、やって良かったよね?
思い出したら顔が赤くなる。何であんな事出来たのかなぁ。




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