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「Wing」
【ファンタジー その他小説】

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「Wing」-1

第一章〜始〜




……熱い……背中が熱い……誰かがこっちを見ている……父さん? 景色が崩れていく……





目を開けると青い空が広がっていた。喉の奥がへばりついているような気がする。手の平が汗で湿っている。
……夢か……ここしばらく夢など見ていなかった。久しぶりの夢がこんなにひどいとは……
体を起こして辺りを見回す。が、誰もいない
……当たり前か……
ため息をひとつついて立ち上がると薄汚れた大きめのマントを羽織り、剣を背負って歩き出す。今日もいい天気だ。良すぎて少しばかり欝陶しく感じる。
何処へ行こう?歩く速度を少し落として考える。今まで通り、このままブラブラするか……それにしてもこの天気のせいかやたらと暑い。
長い髪を掻き上げて、太陽を睨む。





「いい加減にして下さい!!」
女性特有の高い怒声が、美しく装飾された部屋に響きわたる。床に真っ赤な絨毯が敷つめられ、壁には普通の人が見ると少し趣味の悪い絵画。そして豪華なシャンデリアが天井から吊り下げられている。その下で肩まである茶髪がよく似合う少女が、肩を震わせて怒っていた。
「何度同じことをおっしゃるのですか!?私は結婚などしないと言ってるのです!」
「そうは言ってもお前ももう十……」
「お父様ッ!! ……失礼、します……」
バタンッ――と扉が勢い良く閉められ、その前にいた召使いの女性を驚かせたが、そんなことは全く気にしない様子で少女はツカツカと歩いて行ってしまった。
大きなため息をつきヤレヤレと首を振ると、独り言のように扉の前の女に話し掛ける。
「えらく勝ち気な性格になったのぉ……アレも早くに母親を亡くした。そのせいやもしれぬ……」
顎髭を触りながら、暫くの間、空を見つめていたが、ふと、
「……ワシは間違っておったやもしれぬな。アレには寂しい思いばかりさせた…………」
と言った。
「そんなことはございません。クレア様は王に大変感謝されております」
女は続ける。
「王のお気持ちは十分伝わっていると思います。ただ自分の気持ちをどのように表せばよいのか、わからないだけだと思います」
「それなら良いが……」
「まずは、クレア様の気が落ち着くまで待ってあげましょう」
「そうだな……当分、結婚の話はしないでおこう……」





「パパのバカ……」
ベッドの端に腰掛けてそう呟いた。
確かに結婚について全く興味が無いわけじゃ無い。でも、今したいわけじゃない。父親の紹介する隣国の王子も悪い人ではない。だけど、王子が自分の好みじゃない。それ以上に、父親の紹介というのが気にいらない。
――最近、父親に反抗ばかりしてる。母親が死んでから、自分に対してずいぶんと過保護になったけど、この頃もっとひどくなった気がする。人の行動にいちいち口を出すし、やたらと結婚話を持ち掛けてくるようになった。心配してくれるのは嬉しいけど、少しひど過ぎる。正直うざい……それが理由だろう。
「なぁ〜んかすっきりしないなぁ……」
こんな時は何処かへ行って気晴らしでもしたほうがいい。そうと決まったら即実行。ドレスのような服から動き易いそれへと着替えると、ベランダからロープを垂らして地に降り立つ。向かう先は秘密の抜け穴――少し補足‥‥この抜け穴はクレアが幼少の頃から、ついニ、三年前までかけて、ある時はスコップで、ある時はツルハシで、そしてまたある時は武器庫からかすめ盗った爆薬で、地道(?)に城壁開け続けた、努力の結晶である――から外に出ると、とりあえず城から少し離れた森に向かって歩き出した。

今日はいい天気♪

空に向かって少し目を細めて微笑んだ。




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