投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

イート・ミー!
【コメディ 官能小説】

イート・ミー!の最初へ イート・ミー! 1 イート・ミー! 3 イート・ミー!の最後へ

イート・ミー!-2

――18時、駅前のハンバーガーショップ。
学校帰りに友人三人とハンバーガーを食って帰るのは、金曜日のささやかな楽しみだ。
そのハンバーガーを食ってるところに最近あいつがよく顔を出す。
「栄助、彼女来たぞー」
「彼女じゃねぇよ」
俺がシェイクを取りに行っている間に、ちゃっかり俺の席に座る錦。錦は友人等のポテトを摘みながら、ひらひらと手のひらを振った。
それを無視して、別のテーブルから持ってきた椅子に腰かけ、俺はシェイクを啜る。
「ヒドイ彼氏だな、シカトするなよ」
「ムカつく〜! 錦ちゃんかわいそう!」
「だから、彼女じゃねぇって」
俺は言って錦を睨みつけた。長い睫毛に縁取られた大きな瞳が俺を見つめる。俺は思わず顔を逸らす。

「……ただの、イトコ」
“ただ”ってところを強調してやる。
「だってさ、錦ちゃん」
「栄助の代わりに、俺と付き合う? 付き合う?」
「えー、どうしよっかなぁ」
にこにこと笑いながら友人等と喋る錦。ツラがいいから、ちやほやされるのは当然だろう。
錦がいると奴等の意識はそっちばかりだ。俺は空になったシェイクの紙コップを持て余す。
つまらない。
そして、これが錦の思惑通りになっていることに苛立つ。
「錦、行くぞ」
「はーい」
いつものように蚊帳の外状態になった俺は、いつものように痺れを切らし、いつものように錦に声をかけて席を立った。嬉しげに返事をする錦も席を立つ。
「また来週な、栄助」
「栄助〜、月曜プールだよ。またキスマークつけてくんなよ! ムカつく!」
「………」
「ばいばーい、錦ちゃん」
「はぁい」
キスマークのくだりに俺は傍らの従妹を睨みつけてやりたくなったが、何とか押し留めた。
錦が手を振るのを横目に踵を返した俺の背中で、友人等の潜められた声が聞こえた。
「どう考えても彼女だよな」
「ムカつく!」
「富士、どんだけ栄助にムカついてんだ」
「あの硬派と言われてた栄助の春だぞ、祝ってやれ」
「何が硬派だよ、見た目がイカついだけじゃん」
「っ……聞こえてんだよ、てめーら!」


「……ったく」
「へへ、彼女だって」
舌打ちする俺の傍らで言う錦。俺は思わず顔を顰めた。
「お前だって俺のことなんか彼氏と思ってないだろ」
「うん」
はっきり言いやがる。
錦が彼女だなんてとてもじゃないが考えられない。だが、こう否定されるのもそれはそれで頭にくる。
(どうせ、こいつの目当ては俺の身体なんだろうな)
「? 栄ちゃん、どうしたの?」
「……いや、自分の思考に落ち込んだだけだ」
俺は気を取り直して歩き出す。その腕を錦が引っ張った。
「おい」
そっちは、と言いかけた俺の言葉を錦が遮る。
「いいとこ見つけたの。そこで、しよ」
こいつが俺達の溜り場に現れるのも、結局はそれが目的だ。
やっぱりか、と俺は脱力した。

で、やってきたのは繁華街の裏手の路地。
ちょっと、待て。
「バカ、お前正気か!? こんなところで」
「だって屋内でヤるの飽きたんだもん。ここ、ほんとに誰も来ないよ」
「そういう問題じゃねぇだろ……!」
しかし錦の表情はマジだ。もう目が潤んでいる。
「にし……」
抱きついてくる錦。俺にしがみついたまま、ゆるゆると腰を揺らす。


イート・ミー!の最初へ イート・ミー! 1 イート・ミー! 3 イート・ミー!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前