一歩前へ踏み出せば...-5
「ごめんなさい....今の...忘れて下さい....」
いたたまれなくなった私はそこから走り去ろうとした。彼はその私の腕を掴み
「待って!!返事聞いてくれないか?」
彼の返事はわかっていた....聞きたくない言葉だろう....しかし....彼にそう言われたら聞かない訳にいかないだろう....覚悟を決めて、彼の前に立ち、今度は彼の顔見つめた。
「もう一度言います....木下君の事が好きです....良かったら私と付き合って下さい....」
「はい....宜しくお願いします。」
彼の言葉に耳を疑った。
「本当に.....ウソじゃ無いですよね?」
「ああ...もちろん本当だよ!」
「信じられない....ダメだと思ってました....木下君....困ったような顔をしていたから....」
「それは....」
彼は少し困ったような顔をして
「俺のほうから.....北原さんの事が好きだって言いたかったから....」
彼は打ち込み途中のメールを見せてくれた。
「このメールを送ろうと思ってた時だったから....情けないよね俺は....好きな人に直接好きって言えないんだから....それなのに北原さんはこんな俺の事を....そう思ったら....」
「私は初めからダメだって思っていたから....何もしないであきらめるのがイヤだったから.....」
私は少し間を置いて
「あのっ!聞いていいですか?」
「えっ?何?」
「本当に私なんかでいいんですか?」
「えっ?どういう事?」
彼は不思議そうな顔をしていた。
「だって....私より可愛い子や性格のいい子はいっぱいいるのに....私なんかで....」
彼は少し怒ったように
「何言ってんだよ!鏡を見た事無いの?」
「えっ?」
私は彼の顔を見つめた。
「北原さんは誰よりも可愛いよ!他の人がどう思っているかわからないけど、俺は北原さんが一番だと思っているよ!」
私は嬉しくて泣きそうになった。しかしもう一つ気になっている事があった。
「あのっ!もう一つ....木下君がデートをしているのを妹が見たって池田君が言ってたって真弓に聞いたんだけど.....」
彼は可笑しそうに笑った。
「ヤキモチを妬いてくれるの?」
「それは.....」
私は恥ずかしくて下を向いていた....
「安心して!!それは北原さんの事だよ!」
「えっ?」
「この前ファミレスに行ったよね!その時の事だよ!」
「本当に?」
「信じて欲しい!俺は北原さん以外の女の子と二人きりで逢った事ないよ!!」
私は自分に妬いていたのだった....
「北原さんでもヤキモチを妬くんだ.....」
「えっ?変ですか?」
「いや別に....でも....何か嬉しい....」
私は真っ赤になっていた....
「北原さん.....お願いがあるんだけど.....」
「えっ何ですか?」
「俺と話す時は敬語を使わないで欲しいんだけど....だって俺達同級生なんだから....」
「それから....北原さんの口癖なのかもしれないけど私なんかって言わないで欲しい.....俺は北原さんが一番だと思うから好きになったんだよ!」
「はい....」
「あと.....もう一ついいかな?」
「えっ?何ですか?」
少し不安気に聞いた。
「北原さんの事.....美咲って呼んでもいいかな?」
私は嬉しさが溢れる笑顔で
「そんな事....いいに決まっているじゃないですか!!」
彼は照れたように
「他の人の前でも美咲って呼んでもいい?」
私は黙って頷いた。
「あのっ....私も木下君の事.....和哉さんって呼んでいいですか?」
「もちろん....」
彼は嬉しそうに頷いた。それは私に奇跡が起きた瞬間だった....今でも信じられない....まさか彼も私の事を....彼の事を好きになって....少しだけだけど私は変わる事が出来た....少しだけ前向きに考えられるようになった....彼の事を好きなって本当に良かった.....