一歩前へ踏み出せば...-2
次の日、足の痛みも気にならなくなり、いつもと変わらない朝を迎えていた。
「美咲!彼氏が迎えに来たわよ!」
下から姉の声がした。下に降りて玄関のほうを見ると彼が立っていた。
「北原さん。足は大丈夫?痛みが酷いようなら、俺の後ろに乗って行く?」
私が彼のそばに行くと小声で話しかけて来た。
「ありがとうございます。もう大丈夫ですので、先に行って下さい!」
「本当に大丈夫?」
彼は心配そうに聞いてきた。
「はい!本当に大丈夫です。」
私が笑顔で答えたので、
「良かった....じゃ学校でね!」
そう言って彼は出て行った。
「美咲!せっかく彼氏が迎えに来てくれたのになんで一緒に行かないの?」
姉がからかうように聞いてきた。
「木下君は彼氏じゃないから!」
「それなら、どうして美咲を迎えに来たの?」
「私を怪我させた責任を感じているから....」
「はいはい!そういう事にしておこうね!」
「もう....お姉ちゃんったら....」
私は逃げるように家を出た。彼が私を迎えに来てくれた事は、本当に嬉しかった。しかし、私は「勘違いしないで!!」そう自分に言い聞かせていた。彼を好きになっても私の片思いで終わるのはわかっていたから....
1ヶ月程過ぎて、夏休みがすぐそこに迫っている頃になると、私は教室で一人でいる事は無くなった。彼がそれとなく話しかけてくれたおかげで、気付くと友達が出来ていた。引っ込み思案の性格が災いして一人でいる事が多かったが、彼のおかげで簡単に友達が出来た。いつのまにか彼の姿を目で追っている私がいた。気付かないうちに彼の事を好きになっていた。私の片思いで終わる事は自分でもわかっていた。そんな時、何気なく本屋に入ると雑誌を見ている彼が目に入った。私は彼に近づいて行った。
「あの....木下君....」
私は思い切って彼に声をかけた。
「えっ?」
彼は振り返って私のほうを見た。
「北原さんか....どうしたの?」
「あの....これから一緒にお昼ご飯なんて....」
多分私の顔は真っ赤になっていただろう。
「無理.....ですよね?」
「えっ?別にいいよ!」
「えっ!」
簡単に了承してくれたので言葉が続かなかった。
「どこにする?」
「そうですね...駅前のファミレスはどうですか?」
「うん!それじゃ行こうか!!」
「はい!」
私達は駅前のファミレスへと歩いて向かった。
「こうしていると、俺達は付き合っているように見えるのかな?」
「えっ?」
「もしも....北原さんの彼氏に知られたらまずいんじゃないと.....」
「大丈夫です!そんな人いませんから....」
「えっ?そうなの?良かった....」
「えっ?そんな事言われたら勘違いしちゃうじゃないですか....」
「何を?」
「何って.....」
(木下君が私の事を....)
なんて言えなかった。言ってしまった後で「そんな事ある訳ないじゃないか」なんて否定されそうで....
「木下君ありがとうね!」
「えっどうしたの?」
「一度お礼を言っておきたかったの....」
「どうして?」
「木下君のおかげでクラスに溶け込む事が出来たから.....本当に感謝しているの....」
「そう言われても....特別な事をした訳じゃないんだけど.....」
私はこういう彼の優しさに惹かれいったのだった。その後食事をして彼とわかれた。私はこのデートもどきを楽しんだ。