〈利益の卵〉-25
スタジオの中のトイレにまで、カメラの姿はあった。なにも知らぬ美優は、鼻歌を歌いながらパンティーを下ろして便座に座り、排泄の開放感に浸っていた。
便器とトイレの個室に隠されていたカメラは、美優のプライバシーをいとも容易く曝け出させ、この会場に犇めく男女達に披露した。
『へえー、あんな顔してオシッコするんだ』
『小便の後はオナラかよ……忙しいなあ』
「嫌あぁぁッ!!!」
自分の排泄シーンを見られるなど、誰しも屈辱であろう。
ましてや美優は、盗撮という卑怯な手段によって暴かれ、曝されたのだ。
誰にも見せた事が無いと思っていた幼器も、自分ですら見た事が無い放屁で丸く開いた肛門も、全て見世物にされたのだ。
もはや美優の股間は“恥部”ではあっても“秘部”ではない。
丸く膨れて肉花を仕舞う幼器も、フワフワと産毛程度に生えはじめた陰毛も、皴が少なく笑窪と見紛う肛門も、皆が皆知ってしまったのだ。
「……な、何なのよ?アイドルになれるって言うから来たのに!!私、真剣なのにぃ!!」
手足を突っ張り、地団駄を踏みながら叫ぶ美優は、遂に泣きはじめ、踵を返してステージから降りようと振り返った………だが、そこにあるドアには、ドアノブは着いてはいなかった。
『何処に行くんだ?美優ちゃ〜ん』
『出口はコッチにしか無いよぉ』
ステージ後ろのドアが一方通行だという事に、美優は今、気がついた。
極度の緊張のあまり、美優には会場にいた男女の姿しか目に入らず、最初に話す挨拶の事で頭はいっぱいだったのだ。
この後ろのドアが開けられないなら、出口は会場左側に二つと、正面の一つしかない。
だが、そこまで行くには、この下品な男女の傍を通る以外にない。
「何なのよ、このボロいビル。私帰るからね!!」
プンプンと怒りながらステージから下りようとした美優に、二人のスーツを着たスタッフらしき男達が駆け寄ると、そのまま美優の両腕を掴んで取り押さえてしまった。
「何すんのよ!!離して!!もうアンタ達なんかに用は無いんだから!!」
ステージ上での〈捕物〉に、会場からは笑い声と歓声が沸き上がった。
怒髪天を衝く美優、しかし、大人の男性に抗えるだけの腕力など無いのは、以前の事件で立証済みだ。
両足をバタ突かせ、顔を左右に振りながら、取り押さえる男達に叫ぶのが関の山だ。