シグナル¨11¨-3
「目、閉じてて」
「どうして?」
「いいから。あと、手は出したままね」
「うん・・・」
よし、ちゃんと目閉じてるね。
薄目開けてたりは・・・してない、大丈夫。
私は鞄から丁寧に包んだ箱を取り出して成敏の手にそっと置いた。
「ねえ、まだ開けちゃだめ?」
律儀に私が合図を出すのを待っているのが可愛い。
もうちょっとこのままでもいいかと思ったけど、早く見てもらいたいしもういいかな。
「いいよ、開けて」
「・・・わあっ?!なっ何これ、もしかしてチョコ?!」
「指輪かもしれないよ」
「え、えっ?!すす凄いな、もし指輪だったら」
下らない冗談にもいちいち驚くから、本当に退屈しない。
成敏は箱を開けてその中身なまた驚いた。
「これって・・・うわあ、可愛い。ハート型のチョコだ!」
「クッキーにしてみたんだ。食べてみて」
「うん。いただきます!」
一口齧ると、結構堅そうな音がした。
クッキーというよりは煎餅の様な、ちょっと強い音だった。
堅かった・・・かな。味は問題無いと思うんだけど・・・
「美味しいよ遥!普段からお菓子作ってるの?」
「ううん、初めて」
「本当に?すっごい美味しい!」
成敏の手は止まらず、箱の中身はあっという間に消えていく。
もう少し味わってほしいなと思う反面、嬉しかったりもする。
「ありがとう、遥。美味しかったよ」
唇の端っこに食べ残しをつけたまま笑いかけてきた。
そんな成敏がとっても愛しくて、思わず口元か無防備になってしまう。
私達、来年もその次も、ずっとこんな感じでいられたらいいな。