シグナル¨8¨-4
更に進むといきなり顔にひやりとした感触が
「うわああああっ?!」
「大丈夫成敏くん?」
「はあはあ・・・なんだ、こんにゃくか、ナメクジかと思った」
「大袈裟だねー。別に怖くないのに」
せ、妹尾さんは当たってないから怖くないだろうけど・・・
暗くてよく見えないからその分過敏になって、ちょっとした事でも驚いてしまうみたいだ。
もう出たい、こんな所来るんじゃなかった。情けないけど誘った事を後悔していた。
でも、妹尾さんに情けない姿はもう見せたくなかった。
夏休みのプールでは結局1人じゃ滑る事が出来なかったし、2度も失敗は出来ない。
「あたしは別に平気だよ。1人でも、いけるし」
妹尾さんは結構度胸がある方なんだな。
見た目は割りと落ち着いてて大人しく見えるけど、それは度胸の良さが醸し出す雰囲気なのか。
最初は強がってるんじゃないかと思ってたけど、今も眉ひとつ動く様子は無い。
何とか出口に辿り着いて外に飛び出した。
廊下の電気がかなり眩しく感じる。
「あんまり怖くなかったね」
「う・・・うん・・・」
最初は気付かなかったけど、なんだか左手に痛みを感じた。
何気なく目をやると、僕の手に、妹尾さんの手が重なっていた。
「せ、妹尾さん?!」
「どうしたの成敏くん。やっぱり怖かった?」
「いや、あの、手・・・」
「へ・・・?!あ、ごっごめん、そんなつもりじゃ!」
妹尾さんは気付くと反射的に離してしまった。
果たしていつから握られてたんだろう?
怖さのあまり感覚が鈍っていた自分が恨めしくなった。
「つっ次、どこ行く?」
・・・でもその日は、もう一度僕と妹尾さんの手が繋がる事は無かった。
映画を見たり、射撃したり、色々遊んだけど、どっちからも手を繋がなかったんだ。
「じゃ、またね。今日は楽しかったよ」
「うん・・・また、ね」
皆がもう一度集まる事もなく、そのまま解散してしまった。
・・・このままでいいのか?
僕は皆とずっと仲良しでいるのを願っている。
でも、妹尾さんと友達のままで満足なのか?
僕にもっと潔さがあれば、さっき手を繋いだままでいられたに違いないのに。
・・・少しずつ変わってきたつもりなのに、何も変わっていないのかな・・・?
単に賢司や速人に張り合いたいのかと前は思ってたけど、それは違う。
僕は一人の女の子として、妹尾さんが・・・・・・
秋の風は冷たさを増して、間もなく冬が来るのを予感させた。
〜〜続く〜〜