シグナル¨6¨-2
〜(Yayoi's Side)〜
「顔が惚けてるよ、妖精ガールちゃん」
「だってぇ・・・メールがすぐ返ってきたんだよ、嬉しいじゃん」
「マジでラブラブだね杏子。幸せなオーラが滲み出てるよ」
遥の言うとおり、満面の笑みを浮かべて携帯を握り締めている杏子。
そりゃあ、彼氏からのメールが来たら嬉しいだろうね。
ましてこないだ付き合い始めたばかりなら、尚更。
「どっちから告白したの。やっぱ賢司からでしょ」
杏子はふるふると首を横に振った。
その仕草と、唇の端にできた笑窪で、告白したのは杏子の方だと分かった。
「マジ?!どんな流れで告ったの」
「うん・・・えっと、実はさ、プール行った時に具合悪くて、賢司くんに病院連れてってもらったの」
・・・あの時、なんかふらついてたけど、そうだったんだ。
そうなったのは顔から滑ったり、カナヅチなのに泳ごうとしたせいだと思ってた。
賢司は気付いてたんだね、さすが。
高校からの付き合いのあたしも、多分遥も気付いてなかったっぽいのに。
「私が我慢してたの気付いてたと思ったらね、もうね、すっごいキュンってしちゃって・・・」
その時の気持ちを思い出したのか、顔を火照らせている。
聞いてるこっちまで顔が熱くなりそうで、思わず扇ぎそうになった。
「で、いっちゃえーって?」
遥の言葉にこくん、と頷く杏子。
「やだー!やだー!」
すぐさま真っ赤になり、顔を隠してしまう。
「よくいけたね。絶対、告るなら賢司の方からだって思ってたのに」
「私も自分じゃ出来ないって思ったけど、なんかね、口から出たの。スルスルって」
ついに私達の中からカップルが一組出来た。しかも最初が杏子なんて、まだ信じられない。
でも、相性は良さそうだし、いつか付き合うとは思ってた。
杏子が自分から告ったくらいだから真剣だろうし、きっと長く続くと思う。
賢司ならマイペースな杏子を引っ張っていけるだろうし、ちゃんと待ってあげたり出来るよね。
・・・速人も、せめてもうちょっと気が利けばいいんだけどなぁ・・・
「あっ、速人くん!」
すると、その気が利かない奴がこの1階ホールにやってきた。
また下らない話でもしようとわざわざ来たのかな。
「来い」
「どこに?ってか、なんで」
「早く来い」
「ちょ、ちょっと!どこつれてくのよ?!」
有無を言わさず手首を捕まれ、引っ張られていく。
何か怒ってる様にも見えるし、早く私と2人だけになろうとしてる様にも見えた。
どっちにしても、速人の様子からはあまり余裕が感じられない。