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シグナル
【青春 恋愛小説】

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シグナル¨6¨-1

長かった夏休みもついに終わり、新学期が始まった。
最初の週も明けて、先生や生徒もやっと目を覚まし始める。

新しい生活が始まった。
学校も、そして僕達も−


「美女と野獣、鮭と熊、アライグマとゴリラ、どれがいい」
「何の候補だ、そりゃあ」
「お前らのユニット名だよ。俺は一番最後が気に入ってるが、どうだ」
「どれもひどいじゃないか。ただの悪口だよ」
「全部似合ってると思うがな、俺は」

ユニット名って・・・
賢司と葉川さんはそういうんじゃなくて、カップルだよ。

「でも、まさか葉川さんから告白するなんてね。驚いたでしょ賢司」
「まあな。食堂に行くにも階段かエレベーターかすら決められない奴が・・・そりゃびびったぜ」
「へっ!いるんだなぁ、世の中には珍獣マニアってのが。どう見ても前科ありって顔だろお前」
「速人、やめろよ。さっきからちょっとひどくないかな?」
「気にすんな。こいつが口の聞き方を知らねえのは生まれつきだろ」

僕より、罵倒されているはずの賢司の方が落ち着いていた。
いつもなら綺麗にバックドロップを極めてるところなのに、表情一つ変わっていない。

「葉川さん、具合悪かったんだね。全然気付かなかった」
「あいつはふんわりしてる様に見えて強いんだよ。誰にも言わず耐えてたんだ、ずっとな」

そういえばちょっと顔色が悪かった様な気もするけど、いつにも増して笑ってたから気にしなかった。
でも、賢司は知ってたんだね。いつもみんなの事を見てるから気付いたんだ。

「そこで病院につれてくふりして、弱ってるところを脅した訳だ。路地裏に誘い込み、付き合わないとここに捨てるぞ、ってか」
「お前は弥生に捨てられそうだな。迷惑ばっかかけてっから」
「な・・・い、いいだろ俺の話は!弥生とはいいお付き合いをさせて頂いておりますから」
「こないだ財布忘れて織田さんに交通費借りてたよね。あれで何回目だよ、もうそろそろ怒ると思うよ」
「うるさい成敏!お前なんか遥と2人じゃ会話もできねえくせに。ちゃんと目ぇ見たことあんのかよ!」
「やめろ、2人とも」

速人はきっと焦ってるんだと思う。
早く織田さんとそういう関係になりたいけど、うまくいかないからモヤモヤしてるんだろう。

僕はこないだプールで結構妹尾さんと遊べたし、満足してる、といったら変だけど楽しめた。
でも速人は織田さんとあまり話せてないみたいだったし、もどかしいのかもしれない。

「お、メールだ」

賢司が電話を握り締めてにやにやしている。
楽しくて仕方ないのが伝わってくるな。でも、やっぱり笑っても怖い顔だ。

「・・・ちょっと行って来る」
「は、速人?どこ行くんだよ」
「弥生のとこだ」

場所が分かるのか聞こうとしたらさっさと行ってしまった。



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